ミュシャの巨大連作『スラヴ叙事詩』の前に立ちすくんで…2017年04月07日

 国立新美術館で開催中の『ミュシャ展』に行った。ミュシャと言えばあのシャレた装飾的なポスターを想起する。私もミュシャのポスターは好きだ。

 だが『ミュシャ展』のメインは華麗なポスターではなく『スラヴ叙事詩』と題する20点の巨大絵画だ。パリでポスター画家として成功したミュシャが祖国チェコに戻ってこんな絵画を制作していたとは、今回の『ミュシャ展』の報道に接するまでは知らなかった。

 フライヤーで紹介されている『原故郷スラヴ民族』をはじめとする20点の大きさに圧倒された。『原故郷スラヴ民族』は610×810cm、他の作品も似たようなサイズだ。これだけ大きいと会場が多少混雑していても鑑賞にさほどの支障がないのが有難い。

 この巨大絵画をチェコからどうやって運んで来たのか気になった。610×810cmの板を船に載せるのは可能かもしれないが、都会の道路をトラックで運搬できるとは思えない。帰宅後ネットで調べて、絵画をクルクル巻いて運んだと判明した。痛まないのか心配だが、専門家の仕事だから大丈夫なのだろう。

 『ミュシャ展』で感激したのは、一部ではあるが写真撮影が可能になっていることだ。海外の美術館では写真撮影OKの所があるが、日本では珍しいと思う。なぜ全部ではなく一部なのだろうと思った。混雑時の写真撮影が鑑賞の妨げになるかの実験的試みかもしれない。

 それはさておき『スラヴ叙事詩』という連作を眺めながら、スラヴ民族とは何だろうという基本的な疑問がわいた。ヨーロッパにはラテン民族、ゲルマン民族、スラヴ民族がいると習ったのは中学生の頃だが、歴史を学ぶにつれてそんなに単純ではなさそうな気がしてきた。ヨーロッパに住む人々の〇△民族、□◇人というアイデンティティは複雑すぎて理解不能だ。

 最近読んだティモシー・スナイダーの『ブラッドランド』『ブラックアース』もヨーロッパの国民国家、民族自決を背景にした歴史書で、人種や民族とは何かを考えざるを得ない内容だった。

 私自身の中に日本人という意識があるのは確かだが、島国育ちのせいか、ことさらに人種・民族を意識せずに生きてきた。そんな呑気な人間だから、ミュシャが巨大絵画群にぶつけたスラヴ人意識とは何であったか、孤高なのか連帯なのか反発なのか郷愁なのかイマイチ理解できない。

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