『ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか?』は難しかった ― 2025年11月25日
先日読んだ『進化論はいかに進化したか』(更科功)が面白く、もう少し進化論を勉強してみようと思い、昨年出た次の新書を読んだ。
『ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか?:進化の仕組みを基礎から学ぶ』(河田雅圭/光文社新書)
著者は東北大名誉教授の進化学者である。研究者の現場報告の趣がある『進化という迷宮』(千葉聡)には、本書の著者・河田雅圭氏の名が何度か登場する。
サブタイトルに「進化の仕組みを基礎から学ぶ」とあり、最新の研究成果をふまえた一般向きの解説書だろう思って読み始めた。読み進めるに従って頭がついて行けなくなった。分子遺伝学のゴチャゴチャした話が私には難しいのだ。大学の専門課程の講義のようにも感じられた。もちろん、大学の講義内容を私が知っているわけではないが…。
本書にはアレルという用語が頻出する。本書冒頭の用語解説には「ゲノム上の同じ位置にある、変異を構成する配列。DNAの1塩基の変異によるアレルはSNPアレル、同一遺伝子の複数のタイプの1つであるアレルは対立遺伝子である」とある。何のコッチャという気分になる。わかりにくい所を読み飛ばしつつ何とか読了した。
著者は生真面目な研究者だと思う。用語の意味を厳密に検討するし、さまざまな事例に基づいた推論を紹介したうえで「不確かだ」「今後の研究が期待される」と表現することも多い。研究者としては当然の姿勢だろうが、読者は森の中の迷路を彷徨っている気分にもなる。
本書は4章から成る。「第1章 進化とは何か」「第2章 変異・多様性とは何か」「第3章 自然選択とは何か」「第4章 種・大進化とは何か」という構成だ。各章末には簡潔な「まとめ」があり、迷路を抜けて「まとめ」に辿り着くとホッとする。この「まとめ」をあらかじめ読んだうえで、本文をじっくり時間をかけてパズルを解くように再読すれば、多少はわかった気分になるかもしれない。
各章末の「まとめ」から、私が興味深く思った事柄は以下の通りだ。
・遺伝的多様性は、集団や種を存続させるために、維持されているわけではない。
・「種を存続」させるように自然選択などの進化プロセスが作用することはない。
・ドーキンス流の利己的遺伝子の見方は進化のプロセスを正しく表していない。
・小進化の機構を理解することなく、大進化は説明できない。進化機構には、依然として未解明なことも多く、今後の研究が期待される。
著者は、今西進化論や福岡伸一の「動的平衡」には、サイエンスの立場から批判的である。次の指摘が興味深い。
「現在、今西進化論を信奉する進化学者はいない。しかし、細胞が入れ替わっても個体は維持されるという「動的平衡」の考えを種に当てはめ「種の保存こそが生命にとって最大の目的」とする福岡伸一氏の思想は、西田哲学や今西進化論が形を変えて継承されているといえる。」
『ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか?:進化の仕組みを基礎から学ぶ』(河田雅圭/光文社新書)
著者は東北大名誉教授の進化学者である。研究者の現場報告の趣がある『進化という迷宮』(千葉聡)には、本書の著者・河田雅圭氏の名が何度か登場する。
サブタイトルに「進化の仕組みを基礎から学ぶ」とあり、最新の研究成果をふまえた一般向きの解説書だろう思って読み始めた。読み進めるに従って頭がついて行けなくなった。分子遺伝学のゴチャゴチャした話が私には難しいのだ。大学の専門課程の講義のようにも感じられた。もちろん、大学の講義内容を私が知っているわけではないが…。
本書にはアレルという用語が頻出する。本書冒頭の用語解説には「ゲノム上の同じ位置にある、変異を構成する配列。DNAの1塩基の変異によるアレルはSNPアレル、同一遺伝子の複数のタイプの1つであるアレルは対立遺伝子である」とある。何のコッチャという気分になる。わかりにくい所を読み飛ばしつつ何とか読了した。
著者は生真面目な研究者だと思う。用語の意味を厳密に検討するし、さまざまな事例に基づいた推論を紹介したうえで「不確かだ」「今後の研究が期待される」と表現することも多い。研究者としては当然の姿勢だろうが、読者は森の中の迷路を彷徨っている気分にもなる。
本書は4章から成る。「第1章 進化とは何か」「第2章 変異・多様性とは何か」「第3章 自然選択とは何か」「第4章 種・大進化とは何か」という構成だ。各章末には簡潔な「まとめ」があり、迷路を抜けて「まとめ」に辿り着くとホッとする。この「まとめ」をあらかじめ読んだうえで、本文をじっくり時間をかけてパズルを解くように再読すれば、多少はわかった気分になるかもしれない。
各章末の「まとめ」から、私が興味深く思った事柄は以下の通りだ。
・遺伝的多様性は、集団や種を存続させるために、維持されているわけではない。
・「種を存続」させるように自然選択などの進化プロセスが作用することはない。
・ドーキンス流の利己的遺伝子の見方は進化のプロセスを正しく表していない。
・小進化の機構を理解することなく、大進化は説明できない。進化機構には、依然として未解明なことも多く、今後の研究が期待される。
著者は、今西進化論や福岡伸一の「動的平衡」には、サイエンスの立場から批判的である。次の指摘が興味深い。
「現在、今西進化論を信奉する進化学者はいない。しかし、細胞が入れ替わっても個体は維持されるという「動的平衡」の考えを種に当てはめ「種の保存こそが生命にとって最大の目的」とする福岡伸一氏の思想は、西田哲学や今西進化論が形を変えて継承されているといえる。」
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