45年前のユーモア小説アンソロジーが心地よい ― 2025年11月22日
『筒井康隆自伝』がきっかけで『盗まれた街』を読んだのに続いて、次のアンソロジーを読んだ。
『12のアップルパイ:ユーモア小説フェスティバル』(筒井康隆・編/立風書房/1980.8)
かなり以前に古書で入手し、そのままになっていた本だ。『筒井康隆自伝』は本書について次のように述べている。
「『12のアップルパイ』というのは、その前に出した『異形の白昼』という恐怖小説のアンソロジーが好評だったので、次こそはわが本来の笑いのアンソロジーでと意気込んで出したものだったが、さほど評判にならなかった。やはり日本文学はユーモアやギャグと相容れないらしい。」
12人の現役(刊行当時)作家のアンソロジーである。作者と作品名は以下の通りだ。
遠藤周作「初春夢の宝船」
星新一「はだかの部屋」
田辺聖子「びっくりハウス」
五木寛之「美しきスオミの夏に」
北杜夫「友情」
吉行淳之介「悩ましき土地」
新田次郎「新婚山行」
生島治郎「最後の客」
豊田有恒「地震がいっぱい」
野坂昭如「ああ水中大回天」
筒井康隆「トラブル」
小松左京「本邦東西朝縁起覚書」
76歳の私にとっては懐かしき面子だ。SF作家4人(星、豊田、筒井、小松)の作品は記憶にある。他の8人も私が若い頃の同時代作家なので、その作品のいくつかは読んでいるが、本書収録作は初読だと思う。
12作品を続けて読み、それぞれの作家の多様な個性を感じた。私が一番面白いと思ったのは筒井康隆「トラブル」であり、二番目は小松左京「本邦東西朝縁起覚書」だ。どちらも雑誌(SFマガジン)で読んだときの強烈な印象が残っている。前者は、昼下がりの日比谷公園で突如勃発したサラリーマン族とTV業界族の人体パイ投げバトルを描いたシュールで突き抜けた作品だ。後者は、南朝が時空を超えて現代に蘇り、ついには東西朝時代に移行するという話で、果敢な天皇制ジョークに唖然とする。
その他で面白いのが五木寛之「美しきスオミの夏に」だ。あの頃の五木寛之的なカッコよさを維持しつつ、何ともおかしな展開になる。作家とは本来的に諧謔の人種だと思う。
このアンソロジーの異色は新田次郎「新婚山行」だろう。新田次郎の山岳小説の一つであり、彼はユーモア作家ではない。そんな作家の作品にユーモアを見出す筒井氏の鑑識眼に感心した。
このアンソロジーに往時のオールスター戦を観るような懐かしさと心地よさを感じるのは、私が年を取ったせいだろうと思う。
『12のアップルパイ:ユーモア小説フェスティバル』(筒井康隆・編/立風書房/1980.8)
かなり以前に古書で入手し、そのままになっていた本だ。『筒井康隆自伝』は本書について次のように述べている。
「『12のアップルパイ』というのは、その前に出した『異形の白昼』という恐怖小説のアンソロジーが好評だったので、次こそはわが本来の笑いのアンソロジーでと意気込んで出したものだったが、さほど評判にならなかった。やはり日本文学はユーモアやギャグと相容れないらしい。」
12人の現役(刊行当時)作家のアンソロジーである。作者と作品名は以下の通りだ。
遠藤周作「初春夢の宝船」
星新一「はだかの部屋」
田辺聖子「びっくりハウス」
五木寛之「美しきスオミの夏に」
北杜夫「友情」
吉行淳之介「悩ましき土地」
新田次郎「新婚山行」
生島治郎「最後の客」
豊田有恒「地震がいっぱい」
野坂昭如「ああ水中大回天」
筒井康隆「トラブル」
小松左京「本邦東西朝縁起覚書」
76歳の私にとっては懐かしき面子だ。SF作家4人(星、豊田、筒井、小松)の作品は記憶にある。他の8人も私が若い頃の同時代作家なので、その作品のいくつかは読んでいるが、本書収録作は初読だと思う。
12作品を続けて読み、それぞれの作家の多様な個性を感じた。私が一番面白いと思ったのは筒井康隆「トラブル」であり、二番目は小松左京「本邦東西朝縁起覚書」だ。どちらも雑誌(SFマガジン)で読んだときの強烈な印象が残っている。前者は、昼下がりの日比谷公園で突如勃発したサラリーマン族とTV業界族の人体パイ投げバトルを描いたシュールで突き抜けた作品だ。後者は、南朝が時空を超えて現代に蘇り、ついには東西朝時代に移行するという話で、果敢な天皇制ジョークに唖然とする。
その他で面白いのが五木寛之「美しきスオミの夏に」だ。あの頃の五木寛之的なカッコよさを維持しつつ、何ともおかしな展開になる。作家とは本来的に諧謔の人種だと思う。
このアンソロジーの異色は新田次郎「新婚山行」だろう。新田次郎の山岳小説の一つであり、彼はユーモア作家ではない。そんな作家の作品にユーモアを見出す筒井氏の鑑識眼に感心した。
このアンソロジーに往時のオールスター戦を観るような懐かしさと心地よさを感じるのは、私が年を取ったせいだろうと思う。
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