那覇市の映画館で『アラビアの女王』を観た2017年04月15日

 今週前半は沖縄・那覇市で過ごした。県庁前の「パレットくもじ」9階の映画館「シネマパレット」で『アラビアの女王』を上映中だった。東京で見逃した映画だ。

 『アラビアのロレンス』の女性版で、実話に基づいた「イラク建国の母」の物語と聞いていたので、欧州・中東の近代史の勉強になりそうで興味があった。その映画を那覇で観ることができた。期待したような歴史物語ではなく恋愛映画に近い作りではあったが、20世紀中東史への関心を喚起する話だった。

 この映画の主人公は、アラビアのロレンスより20歳年長の英国の貴婦人・ガートルード・ベルである。私はこの映画で初めてアラビアで活躍したこの女性のことを知った。

 映画は史実をベースにしたフィクションだが、砂漠のシーンに魅了された。砂漠と言えば『アラビアのロレンス』と『眼には眼を』が印象深いが、そんな過去の映画を彷彿とさせる砂漠の映像だ。

 主演はニコール・キッドマンで、美しき女親分が従者を引き連れて砂漠の部族を歴訪する話だ。その歴訪を観ていると往年のテレビ番組「兼高かおる世界の旅」を連想し、ガートルード・ベルが兼高かおるに重なって見えてきた。

 また、「西のかた陽関を出ずれば故人なからん」という漢詩や「蒙古放浪の唄」などが醸し出す大時代的砂漠ロマンの世界も想起され、砂漠へと旅立つシーンにうっとりした。

 と言っても、この映画の歴史的な背景にはサイクス=ピコ協定などイギリスの二枚舌、三枚舌外交がある。砂漠を旅行く駱駝の隊列にロマンを感じても、この映画に登場するイギリス人たちの活躍に素直に納得するわけにはいかない。『アラビアの女王』はあえてそんな葛藤を避けた内容になっているのだが…

 沖縄の地でこの映画を観ていると、20世紀の中東と21世紀の沖縄に通底するものがあるように思えてきた。

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