台湾一周観光旅行で感じたこと2017年04月30日

上:太魯閣渓谷へ続く道、下:「台北101」前の広場
◎台湾は世界史の縮図のような島かもしれない

 4泊5日の台湾一周観光をしてきた。短期間の観光旅行で国の実態をつかめるとは思わないが、それでも、本を読んだだけでは得られない現地の雰囲気を多少は感得できた気がする。

 一番の収穫は、台湾の大雑把な地誌が頭に入ったことだ。中国大陸に対峙した西側は日本の東海道だと了解した。北の台北は東京、南の高雄は大阪で、その間には新幹線が走っている。沿線の台中は名古屋、台南は京都だ。西側は高速道路も整備されている。

 太平洋沿岸の東側は田舎である。台風襲来が多いせいか苫屋風であってもコンクリート造りの家が多い。かつて生蛮とか高砂族と呼ばれた原住民族(約70万人)の多くはこの地域に住んでいるそうだ。

 今回の旅行で台湾は山が多い国だと実感した。新高山(今は玉山)が富士山より高いとは承知していたが、九州ほどの大きさの台湾の背骨は三千メートル級の山岳地帯だ。日本と同じように海岸線近くまで山が迫っていて平野は少ない。

 そんな国土に住む人々は主に4つに分けられる。閩南(みんなん)人、客家、外省人、原住民族(16族から成る)の4つだ。ツアーガイド(台湾人)は4つの民族と説明したが、これを民族と呼ぶのが適切か否かはわからない。

 この島国に言語も異なる多様な人々が居住するに至った経緯をたどれば、そこにはマクロな人類史が圧縮されているようにも感じられる。同じ島国でも日本とはかなり事情が異なっている。世界史の縮図として台湾を観るのは、あらためて考えてみたい面白いテーマだ。

◎ちらりと見た二つの光景

 台北の街角では二つの「政治的」な光景を目撃した。

 一つは、観光客が集まる「台北101」という高層ビルの前の広場で目撃した一団だ。中華人民共和国の五星紅旗を振り回しながら示唆行動をしていた。ツアーガイドは「よく事件を起こす人たちです」と苦々しげにつぶやいた。

 台南市郊外にある有名な八田與一(日本統治時代、ダム建設による農業水利事業に貢献をした技術者)像の首が切り取られる事件が日本でも報道された直後であり、あの事件と関連のある団体ではなかろうかと思った。ヤレヤレという気分だ。

 もう一つの光景は総統府前のデモ準備光景で、バスの車窓からほんの一瞬だけ見えた。ツアーガイドの説明では「年金デモ」の準備だそうだ。

 台湾では一般人の年金はかなり低額だと聞いていたので、その改善を訴えるデモだと思ったがそうではなかった。

 台湾では公務員だけに破格の18%という預け入れ金利が適用され、それが実質的には公務員の高額な年金になっている。蔡英文総統はこの公務員優遇制度を見直す年金改革を進めようとしている。それに反対して既得権益を守ろうとしているのが公務員たちによる「年金デモ」なのだ。ナンダカナーという気分だ。

 ちらりと見ただけの二つの光景に、経済発展を遂げた近代国家・台湾の抱える内憂外患の一端が垣間見えた気がした。日本を含めどの国もいろいろな課題をかかえている。