中国と朝鮮のゴチャゴチャした時代の歴史を読んだ2022年02月04日

『隋唐帝国と古代朝鮮(世界の歴史6)』(礪波護・武田幸男/中央公論社/1997.1)
 『中華文明の誕生(世界の歴史2)』に続いて、時代がつながる次の巻を読んだ。

 『隋唐帝国と古代朝鮮(世界の歴史6)』(礪波護・武田幸男/中央公論社/1997.1)

 前半6割の西晋から唐までは礪波護氏が執筆、後半4割の朝鮮先史時代から新羅・渤海までは武田幸男氏が執筆している。

 前半は先日読んだばかりの『大唐帝国』(宮崎市定)の時代と重なり、頭に入りやすい。後半の古代朝鮮史は私には未知の世界なので読むのに苦労した。

 西晋から隋唐に至るまでの王朝は南北に分裂していて複雑だ。南は東晋、宋、斉、梁、陳、北は五胡十六国、北魏、東魏、西魏、北斉、北周と続き、隋が南北を統一する。似たような国名がゴチャゴチャ続く分裂時代を頭に入れるのは大変だ。受験生でなくてよかったと思う。

 南北に分かれた時代、北は五胡(匈奴・鮮卑・羯・氐・羌)など北方遊牧民系の非漢族の王朝で、南は漢族系の王朝だ。南北を統一した隋唐は北の鮮卑族拓跋部だと知ったのは比較的最近で、それまで私は隋唐は漢族の王朝だと思っていた。

 本書を読むと、この問題のややこしさがわかる。著者は初めの方で次のように述べている。

 「隋王朝の皇室楊氏や唐王朝の皇室李氏が、はたして名門の漢族なのか、あるいは鮮卑族なのか、という問題については、後章であらためて取り上げる。」

 確かに後章でいろいろな史実を紹介しているが、明解な結論を述べているようには思えない。隋や唐の皇室は漢族の名門貴族に連なっているようにふるまい、史書の書き換えなどもしている。周囲からはミエミエだったらしいが。

 混血もあっただろうし、この時代に「民族」があったわけではない。民族はなくても貴族はあった。おのれの血統を高貴なものに粉飾する欲求は古代から連綿と続いているようだ。

 本書後半の古代朝鮮史はややこしくて、あまり頭に入っていない。中国から流れてきた人々や地元の人々が織りなす歴史はかなり複雑だ。内部紛争と外圧が絡んだ合従連衡のくり返しはどの時代のどの地域でも共通の事象に思われる。

 あらためて認識したのは、古代朝鮮が古代日本とかなり密接に絡まっていることだ。百済経由の仏教伝来や白村江の戦いの他にも興味深い話がいろいろある。日本の前方後円墳とそっくりの墓が、朝鮮の南部で10基あまり確認されているそうだ。