中国古代史は故事・四字熟語のルーツ2022年02月01日

『中華文明の誕生(世界の歴史2)』(尾形勇・平勢隆郎/中央公論社/1998.5)
 私はシルクロードや中央ユーラシア史に関心があるのに、中国古代史は苦手だ。両者は深く関連しているので、中国古代史を敬遠し続けるわけにもいかず、『大唐帝国』(宮崎市定)を読んだのを機に次の概説書を読んだ。

 『中華文明の誕生(世界の歴史2)』(尾形勇・平勢隆郎/中央公論社/1998.5)

 本書は中国の新石器時代から三国時代までを扱い、2部構成になっている。王朝を羅列すれば以下の通りだ。

 殷、周、東周、春秋戦国、秦、前漢、新、後漢、魏、蜀、呉

 平勢氏執筆の第1部が春秋戦国まで、尾形氏執筆の第2部が秦以降になっている。

 第1部はやや専門的な暦に関する議論が多く、私には難しかった。史書が記述する王の即位時期と暦に関する詳細な検討によって年号のズレを提示していて、スリリングだが十全には理解できなかった。歴史の実相を解明しようとする研究者の熱気が伝わってくる。史書に粉飾があるのはわかる。

 第2部では古代史を叙述しつつ遺跡の現状も語っていて興味深い。始皇帝陵の地下の宮殿の発掘調査が行われていないのは、過去の記録からみて「盗掘ずみ」で何もないと推察されるからだそうだ。なるほどと思いつつも不思議な気がする。きっと、発掘するべき場所が他にも多いのだろう。

 本書が扱う春秋戦国時代には数多くの国が存在する。戦国の七雄は秦、魏、趙、燕、斉、韓、楚で、その他にも晋、周、曹、鄭、衛、魯、宋、呉、越などイロイロあり、その位置や盛衰を歴史地図で確認するのは大変である。歴史書を読むとき、位置がわからない地名はなるべく地図で確認するよう心掛けている。もちろん、不明なときは読み飛ばす。

 本書で、春秋戦国の国は「面(領域)」ではなく「点(都市)」と知って蒙を啓かれた。「点」の争奪戦なので飛び地もできる。地図上の「面」にこだわらない方がいいのである。

 春秋戦国は諸氏百家の時代である。本書にも「奇貨居くべし」「鶏鳴狗盗」「宋襄の仁」「鼎の軽重」などの言葉が出てくる。多くの故事や四字熟語のルーツがこの時代にあると思い至り、春秋戦国への興味が少し高まった。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
ウサギとカメ、勝ったのどっち?

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://dark.asablo.jp/blog/2022/02/01/9460475/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。