『激動 日本左翼史:学生運動と過激派1960-1972』は苦いが…2022年01月29日

『激動 日本左翼史:学生運動と過激派1960-1972』(池上彰・佐藤優/講談社現代新書)
 新聞広告で「売れてます」と喧伝されている次の新書、スルーしようと思っていながら、読んでしまった。

 『激動 日本左翼史:学生運動と過激派1960-1972』(池上彰・佐藤優/講談社現代新書)

 本書の前著『真説 日本左翼史:戦後左派の源流 1945-1960』は読んでいない。本書が扱う「1960-1972」は私の学生時代(小学6年から大学卒業まで)に重なる。私には多様な思い出の詰まった時代だ。それ故に、本書を敬遠する気分と読みたい気分がせめぎあう。

 だれもが、青春時代の記憶には甘酸っぱいものと苦いものが混ざりあい、あえて掘り返したくない事項も堆積している。そんな心情を、あの時代への好奇心が少し上回り、本書に手が伸びた。

 対談本だから読みやすく、週刊誌の記事を読んでいるような気分で面白く読了した。「ヘェー」「そうだったのか」と思う興味深い話題も多い。1950年生まれの池上氏は私より2歳下、同じ時代の空気を呼吸している。1960年生まれの佐藤氏は12歳下なのに、1960年代の旧左翼や新左翼の言説を知悉しているのに感心した。同志社大学で神学研究の学徒だった佐藤氏が、高校2年から大学2年までは社青同協会派だったと知り、何となく納得できた。理論探求の青年だったのだろう。

 1960年代から1970年代初頭までの、60年安保・全共闘・新宿騒乱・内ゲバ・連合赤軍・日本赤軍などを語り合った本書は、高揚と衰退の時代を総括し、あの時代からくみ取るべきものも提示している。

 二人の意見には概ね共感できる。だが、とらえかたが一面的で単純だとも感じる。対談新書本という限られた分量では仕方ないとは思うが、あの時代を総括するには、より広い視野でより深く考察するべきだと感じる。それは「左翼史」という枠組みを超えることになるが。

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