吉田羊主演の『ハムレットQ1』はテンポがいい芝居2024年05月13日

 パルコ劇場でシェイクスピアの『ハムレットQ1』(訳:松岡和子、演出:森新太郎、出演:吉田羊、飯豊まりえ、吉田栄作、他)を観た。

 『ハムレット』にはQ1、Q2、F1という三種類の原本があるそうだ。現在はQ2とF1の折衷版を使うことが多く、Q2やF1より短いQ1は不完全な版とされているらしい。しかし、今回の上演は、ほとんど上演されないQ1をあえて使っている。だから、タイトルは『ハムレットQ1』なのだ。

 昨年観た河合祥一郎訳・野村萬斎演出の『ハムレット』の上演時間は3時間15分(休憩時間を除く)だったが、今回の『ハムレットQ1』は2時間30分(休憩時間を除く)だった。展開がスピーディでハムレットの長台詞も少ない。

 森新太郎演出・吉田羊主演のパルコ劇場でのシェイクスピア劇は3年前の『ジュリアス・シーザー』に続いて2本目である。『ジュリアス・シーザー』は出演者が全員女優というユニークだ趣向だった。今回は、ハムレットを吉田羊が演じ、廷臣を演じる女優もいるが、概ね男性を男優、女性を女優が演じている。

 ハムレット役の吉田羊には、まったく違和感がない。若い王子とは中性的存在なのかもしれない。ハムレットが狂気を演じるとき、急にコミカルな高音の女性の声に変貌するのが面白い。笑えるハムレットである。テンポのいい展開も心地いい。主要人物がみな死んでしまう終幕に向かってどんどん突き進んでいく印象の舞台だった。

 抽象的な造形のモノトーンの舞台装置は開幕から終幕まで変化しない。王宮も墓場も同じである。墓場にこそふさわしい舞台の上で物語が進行しているように見えてくる。

 ハムレットの衣装はシンプルな黒いマントだが、他の役者たちは現代の服装である。クローディアス(吉田栄作)はネクタイ&スーツに王冠を被って登場する。そのチグハグな姿は、王冠にふわしくないと揶揄しているようにも見える。クローディアスを小心な男に描いた舞台である。

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