沖縄復帰から約半世紀の体験的世相史2021年11月13日

『増補改訂 ぼくの沖縄〈復帰後〉史プラス』(新城和博/ボーダー新書/ボーダーインク)
 那覇市の書店の店頭に地産本のベストセラーとして積まれていた次の新書を読んだ。

 『増補改訂 ぼくの沖縄〈復帰後〉史プラス』(新城和博/ボーダー新書/ボーダーインク)

 本書の版元ボーダーインクは那覇市の出版社で、本書の著者はその設立に関わった人である。1963年那覇市生まれの著者・新城和博氏は琉球大学卒業後、福岡で就職するが1か月で沖縄に戻り、その後は沖縄で活躍している編集者である。地元の新聞へ寄稿するコラムニストでラジオやテレビにも出演し、多数の著書がある。

 本書は沖縄タイムスに連載した「沖縄復帰後史 我らの時代のフォークロア」をまとめたもので、それぞれの時代のトピックを語るコラム集成である。連載は2012年に終了し、本書初版は2014年に刊行、その後の2020年までのトピックを追加したのが、この増補改訂版である。2020年8月第2刷の本書には、首里城焼失や新型コロナウイルスの話も載っている。

 この半世紀の間に沖縄ではさまざまな出来事があった。現地の人がそれをどんな気分で体験してきたか、その時々の空気が伝わってくる本である。

 沖縄の本土復帰は1972年(来年で50年だ)、著者は9歳の小学生だった。それから約半世紀の間に著者が体験したアレコレの思い出を積み上げた本書は、読みやすい沖縄世相史・文化史である。各コラムの末尾に註釈と出来事年表があり、私のような部外者には勉強になる。

 海洋博、具志堅用高、喜納昌吉、安室奈美恵、沖縄サミット、高校野球、オスプレイなど話題は多岐にわたる。知事選や県民集会の話題も多い。著者は太田昌秀革新県政支持、辺野古移転反対、オール沖縄の翁長知事、玉城知事支援であり、その時々の心情を率直に語っている。人によって考えはさまざまだろうが、沖縄の人々の平均的な思いを反映していると感じた。

 面白く思ったのは首里城の見方である。1992年に首里城が復元オープンしたとき、「ハリボテでしょう」という意見に著者は共鳴していたそうだ。でも、復元作業に携わった人の苦労を知るにつけ、首里城の意義も理解するようになる。そして27年後、首里城焼失を眼前にしたとき、首里城は27年かけて沖縄のシンボルになっていたと気づき、焼失したことによって存在感が増したと感じるのである。