皇帝ハインリッヒ4世は頑張っている ― 2026年02月16日
十字軍関連の本をボチボチ読んでいる流れで次の冊子を読んだ。
『ウルバヌス2世と十字軍:教会と平和と聖戦と』(池谷文夫/世界史リブレット人・山川出版社)
クレルモン宗教会議で十字軍を提唱した教皇ウルバヌス2世の事績解説がメインで、第1回十字軍についても概説した96頁のブックレットである。
イェルサレムを占拠した第1回十字軍の実態については、参加者が残した当時の書簡などを紹介している。襲来した側の記録からも、十字軍とは「蛮族の襲来」に他ならないと見えてくる。書簡は異教徒虐殺を誇らしげに語り、「わが兵たちは馬の膝まで浸るサラセン人の血の海に乗り入れました。」と述べている。
著者は「史料に嬉々として記述されている聖戦の暗黒面は、後世に作成された種々の書物や写本の挿絵においては描かれることがなかった」と指摘している。
本書によって、十字軍提唱の背景に教皇と皇帝の攻防があったとの認識を新たにした。司教叙任権に絡んだ「カノッサの屈辱」は1076年の事件、第1回十字軍によるイェルサレム陥落は1099年である。この二つの事象の間の23年にわたる教皇と皇帝との攻防が興味深い。
皇帝ハインリッヒ4世が教皇グレゴリウス7世に謝罪した「カノッサの屈辱」発生時、ハインリッヒは27歳、グレゴリウスは57歳ぐらいだった。この事件、ハインリッヒの敗北というよりは戦略だったように思える。その後、ハインリッヒは巻き返し、グレゴリウスはローマ脱出後に65歳ぐらいで憤死する。
グレゴリウスの後継者がウルバヌス2世である。教皇ウルバヌスと皇帝ハインリッヒの一進一退の攻防はグレゴリウス没後も継続する。
本書を読んでいて、ハインリッヒは頑張っているなあとの感を強くした。共治帝にした長男は教皇側に寝返り、皇后(2番目の妻)も教皇のもとに走る。教皇はハインリッヒの長男や妻らを巧みに利用する。それでもハインリッヒは巻き返す。
教皇と皇帝の攻防に関しては、最終的に司教叙任権は教皇のものになるので教皇側の勝ちとされている。だが、ウルバヌス対ハインリッヒで見ると、そうは言い切れないようだ。ウルバヌスはイェルサレム陥落の年に没する。その頃、ハインリッヒは長男を廃位し、次男(ハインリッヒ5世)をドイツ王に戴冠させていた。
著者は次のように述べている。
「ウルバヌス最晩年の年、帝国内の情勢はまたも皇帝優位へとゆりもどされていたのである。叙任権闘争の最終決着に至るまで、後継教皇たちの苦闘は続く。」
本書の範囲からは外れるが、その後、ハンリッッヒは次男にも裏切られれる。
『ウルバヌス2世と十字軍:教会と平和と聖戦と』(池谷文夫/世界史リブレット人・山川出版社)
クレルモン宗教会議で十字軍を提唱した教皇ウルバヌス2世の事績解説がメインで、第1回十字軍についても概説した96頁のブックレットである。
イェルサレムを占拠した第1回十字軍の実態については、参加者が残した当時の書簡などを紹介している。襲来した側の記録からも、十字軍とは「蛮族の襲来」に他ならないと見えてくる。書簡は異教徒虐殺を誇らしげに語り、「わが兵たちは馬の膝まで浸るサラセン人の血の海に乗り入れました。」と述べている。
著者は「史料に嬉々として記述されている聖戦の暗黒面は、後世に作成された種々の書物や写本の挿絵においては描かれることがなかった」と指摘している。
本書によって、十字軍提唱の背景に教皇と皇帝の攻防があったとの認識を新たにした。司教叙任権に絡んだ「カノッサの屈辱」は1076年の事件、第1回十字軍によるイェルサレム陥落は1099年である。この二つの事象の間の23年にわたる教皇と皇帝との攻防が興味深い。
皇帝ハインリッヒ4世が教皇グレゴリウス7世に謝罪した「カノッサの屈辱」発生時、ハインリッヒは27歳、グレゴリウスは57歳ぐらいだった。この事件、ハインリッヒの敗北というよりは戦略だったように思える。その後、ハインリッヒは巻き返し、グレゴリウスはローマ脱出後に65歳ぐらいで憤死する。
グレゴリウスの後継者がウルバヌス2世である。教皇ウルバヌスと皇帝ハインリッヒの一進一退の攻防はグレゴリウス没後も継続する。
本書を読んでいて、ハインリッヒは頑張っているなあとの感を強くした。共治帝にした長男は教皇側に寝返り、皇后(2番目の妻)も教皇のもとに走る。教皇はハインリッヒの長男や妻らを巧みに利用する。それでもハインリッヒは巻き返す。
教皇と皇帝の攻防に関しては、最終的に司教叙任権は教皇のものになるので教皇側の勝ちとされている。だが、ウルバヌス対ハインリッヒで見ると、そうは言い切れないようだ。ウルバヌスはイェルサレム陥落の年に没する。その頃、ハインリッヒは長男を廃位し、次男(ハインリッヒ5世)をドイツ王に戴冠させていた。
著者は次のように述べている。
「ウルバヌス最晩年の年、帝国内の情勢はまたも皇帝優位へとゆりもどされていたのである。叙任権闘争の最終決着に至るまで、後継教皇たちの苦闘は続く。」
本書の範囲からは外れるが、その後、ハンリッッヒは次男にも裏切られれる。

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