58年ぶりに観た『裏表先代萩』2026年04月15日

 歌舞伎座で四月大歌舞伎の「昼の部」と「夜の部」を観た。演目は以下の通りだ。

【昼の部】
 一、廓三番叟
 二、裏表先代萩
  序幕 花水橋の場
  二幕目 大場道益宅の場
  三幕目 足利家御殿の場/同 床下の場
  大詰  問注所小助対決の場/控所仁木刃傷の場
【夜の部】
 一、本朝廿四孝(十種香)
 二、連獅子
 三、浮かれ心中

 『裏表先代萩』は私にとって懐かしい演目である。私が初めて観た歌舞伎が『裏表先代萩』だ。半世紀以上昔の大学生の頃だった。観劇を予定していた叔母に急用ができ、誰か行く人はいないかとの連絡があり、チケットを譲り受け、国立劇場に赴いた。初体験の歌舞伎の記憶はオボロだが、三つのシーンだけ憶えている。「腹が減ってもひもじゅうない」という子役の台詞、花道の「すっぽん」からせり上がってくる仁木弾正、広間の奥の襖が開いた向こうに広がる遠近法の千畳敷――この三つである。

 その後、60歳過ぎまで歌舞伎を観ることはほとんどなかった。歌舞伎を観るようになったのは、時間に余裕ができたこの十数年(現在、私は77歳)である。『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』を観て、私が初めて観た演目だと思った。だが、タイトルが違うのが不思議だった。

 『伽羅先代萩』をもとにした別バージョンの『裏表先代萩』があると知ったのは最近だ。そして今回、『裏表先代萩』が上演されたのである。パンフレット末尾の上演記録(昭和20年以降)によれば、『裏表先代萩』は戦後6回しか上演されてない。今回が7回目の上演である。

 パンフレットの上演記録のおかげで、私が昔観たのは1968年5月の国立劇場公演だと判明した。58年前、19歳のときだ。出演した主な役者も確認できたが、その演技を憶えているわけではない。

 今回の『裏表先代萩』は八代目菊五郎が小助、政岡、仁木弾正の3役を演じる。やはり、政岡のシーンが一番面白く、引き込まれる。

 夜の部の『浮かれ心中』は井上ひさしの直木賞受賞作『手鎖心中』を歌舞伎化した演目で、わかりやすくて面白い。亡くなった勘三郎が何度か演じたそうだ。それを勘九郎が演じている。勘九郎のコミカルな演技を観ていると、やはり父親に似ているなあと思った。

 『手鎖心中』は昔読んでいるが、ぼんやりとした記憶しかない。『浮かれ心中』が面白かったので『手鎖心中』を再読したくなった。

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