花園神社で唐十郎の『黒いチューリップ』を観た2026年05月09日

 新宿花園神社境内の紫テントで新宿梁山泊公演『黒いチューリプ』(作:唐十郎、演出:金守珍、出演:水嶋カンナ、荒澤守、二條正士、鴨鈴女、他)を観た。

 1983年に唐十郎が蜷川幸雄に書き下ろした芝居で、初演は西部劇場(パルコ劇場の前身)、李礼仙や柄本明が出演したそうだ。今回の演出の金守珍は蜷川幸雄と唐十郎の二人を師匠とする演劇人である。公演パンフレットには、初演時のチラシ・チケット・舞台写真などが載っている。当然ながら李礼仙も柄本明も若い。

 私は今回が初見で、戯曲も未読だ。デュマに『黒いチューリプ』という小説があり、芝居のなかでデュマに言及しているが、その小説も私は読んでいない。

 この芝居では、おかしな姉妹が栽培している「黒いチューリップ」という存在しえない花に、パチンコ台のチューリップを重ねている。パチプロと姉妹が絡んだ哀切で不思議な世界が展開する。チューリップ→パチンコの連想に共感した。

 唐十郎は「刑務所志願の女」という新聞記事からこの芝居を発想し、その女を乗せたタクシー運転手にも取材したそうだ。そんな現実世界で得た素材は妄想世界に溶解し、怪異な別世界を紡ぎ出す建材に変換されている。

 幕開きで怪しげな天魔が「時はゆくゆく 乙女は婆アに…」と歌いながら登場する。『少女仮面』冒頭の「老婆の歌」だ。あの歌に続く印象的な台詞「…錬肉術は誰にしよう」「何よりも、肉体を!」も語る。また、中盤では『ジョン・シルバー』の「74人で船出をしたが、帰ってきたのはただ一人」の歌も飛び出す。戯曲を読んでいないので、戯曲に組み込まれているのか演出の工夫なのかはわからない。テント内に唐十郎世界が立ち上がってくる楽しい仕掛けだ。オールド・ファンは感激。

 一粒300メートルのグリコの看板を背負った狂言回しの「少年グリコ」が昭和の懐かしさを体現している。この芝居は『ロミオとジュリエット』を借用したシーンもあり、「小田島雄志訳」を持ち上げる台詞もある。1983年当時の空気を感じるが、21世紀の上演なら唐十郎ファンの松岡和子訳への挨拶があってもいいのではと思った。

 ラストの屋台崩しは、端正で壮大なチューリップ畑が広がる。屋台崩しの先にまた舞台がある感じに意外性があり、こんな仕掛けもいいなと思った。初演の西部劇場でも、蜷川幸雄は屋台崩しもどきの工夫をしたのかもしれない。

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