『物語イランの歴史』はイランの独自性を解き明かしている ― 2025年12月17日
中公新書の『イラン現代史』(黒田賢治)を読んだのを機に、23年前に出た次の中公新書も読んだ。
『物語イランの歴史:誇り高きペルシアの系譜』(宮田律/中公新書/2002.9)
紀元前6世紀のアケメネス朝からイラン革命(1979年)後の21世紀初頭まで、約2600年の歴史を概説している。「序章 イラン人の日常生活と文化」は三十数頁、かなりの分量だ。著者の体験をふまえたイランの人々の現状(2002年)を興味深く紹介している。本書は、そんなイランがどのようにして形成されてきたかを解読している。
本書の記述の7割強が18世紀以降の近現代である。アケメネス朝、サーサーン朝からイスラム帝国を経てシーア派のサファヴィ朝に至る近代以前は、歴史教科書的な記述ではなくイランの文化や文明を語るエッセイに近い。わかりやすくて面白い。当然のことながら、近現代のイランは近代以前に形成された文化や文明を基盤としている。
本書のサブタイトル「誇り高きペルシアの系譜」は、まさに本書が描くイラン像のテーマである。アケメネス朝に始まるペルシアの文明に、アラブから押し寄せてきたイスラームが融合、そこにイランの文化や文明が形成された。イランの独自性である。
サーサーン朝以降の前近代のイランはアラブ人やトルコ人に支配された。だが、イラン人から見ればアラブ人は無知な砂漠の遊牧民、トルコ人は武力で優越していても愚鈍で繊細に欠ける人々だった。本書の次の指摘にナルホドと思った。
「こうしたイラン人のみずからの文化に対する優越意識も、彼らがイスラームの少数派であるシーア派信仰に固執する一要因となり、その教義の発展に影響を及ぼしたことはまちがいない。」
本書刊行の2002年は、ハーメネイーがホメイニーに続く第2代最高指導者になって12年目、改革派のハーターミーが大統領の時代である。核開発疑惑問題はまだ発生していない。著者はイランの将来を楽観しているわけではないが、改革派に期待しているように見える。また、イランのナショナリズムの台頭へ言及し、次のように述べている。
「もともと「イスラーム」と「イランの民族主義」は両立しない。(…)ホメイニーや、イスラームの価値を墨守しようとする保守派が、ナショナリズムを否定するのは、それが人々のイスラームへの信仰や信頼を希薄にし、イスラーム共和国のイデオロギーや、革命以来のイランのイスラーム的社会規範を損なうからだ」
興味深い指摘だと思った。
『物語イランの歴史:誇り高きペルシアの系譜』(宮田律/中公新書/2002.9)
紀元前6世紀のアケメネス朝からイラン革命(1979年)後の21世紀初頭まで、約2600年の歴史を概説している。「序章 イラン人の日常生活と文化」は三十数頁、かなりの分量だ。著者の体験をふまえたイランの人々の現状(2002年)を興味深く紹介している。本書は、そんなイランがどのようにして形成されてきたかを解読している。
本書の記述の7割強が18世紀以降の近現代である。アケメネス朝、サーサーン朝からイスラム帝国を経てシーア派のサファヴィ朝に至る近代以前は、歴史教科書的な記述ではなくイランの文化や文明を語るエッセイに近い。わかりやすくて面白い。当然のことながら、近現代のイランは近代以前に形成された文化や文明を基盤としている。
本書のサブタイトル「誇り高きペルシアの系譜」は、まさに本書が描くイラン像のテーマである。アケメネス朝に始まるペルシアの文明に、アラブから押し寄せてきたイスラームが融合、そこにイランの文化や文明が形成された。イランの独自性である。
サーサーン朝以降の前近代のイランはアラブ人やトルコ人に支配された。だが、イラン人から見ればアラブ人は無知な砂漠の遊牧民、トルコ人は武力で優越していても愚鈍で繊細に欠ける人々だった。本書の次の指摘にナルホドと思った。
「こうしたイラン人のみずからの文化に対する優越意識も、彼らがイスラームの少数派であるシーア派信仰に固執する一要因となり、その教義の発展に影響を及ぼしたことはまちがいない。」
本書刊行の2002年は、ハーメネイーがホメイニーに続く第2代最高指導者になって12年目、改革派のハーターミーが大統領の時代である。核開発疑惑問題はまだ発生していない。著者はイランの将来を楽観しているわけではないが、改革派に期待しているように見える。また、イランのナショナリズムの台頭へ言及し、次のように述べている。
「もともと「イスラーム」と「イランの民族主義」は両立しない。(…)ホメイニーや、イスラームの価値を墨守しようとする保守派が、ナショナリズムを否定するのは、それが人々のイスラームへの信仰や信頼を希薄にし、イスラーム共和国のイデオロギーや、革命以来のイランのイスラーム的社会規範を損なうからだ」
興味深い指摘だと思った。

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