観る前に読んだ『火星の女王』は物足りなかった ― 2025年11月28日
小川哲の新作SFを読んだ。
『火星の女王』(小川哲/早川書房/2025.10)
5年前この作家の『ゲームの王国』に圧倒されて以来、『ユートロニカのこちら側』、『地図と拳』、『君のクイズ』、『君が手にするはずだった黄金について』をどれも面白く読んだ。だが、書店の店頭に積まれている『火星の女王』を手にしたとき、露骨なSFタイトルに少し躊躇した。タイトルから連想するようなスペース・オペラではなく、近未来の火星と地球を舞台にしたリアルな物語のようだ。いずれ読むにしても後回しでいいやと思って平積み棚に戻した。
後日、この小説がNHKのTVドラマで年末に放映されると知った。ドラマを観てから読むより読んでから観る方がいいので、あわてて入手して読んだ。小説を映像化した作品の面白さが小説を超えることはあまりない。特にSF場合、ドラマや映画の映像を小説の「挿絵」のひとつとして楽しむのがいいと私は感じている。だから、映像を観る前に小説を読んでおくのがいい。「SFは絵だねぇ」という言葉もある。
『火星の女王』は面白いSFだったが、物足りなさを感じた。いままでどこかで読んだSFの寄せ集めのようにも思え、やや期待外れだった。
この小説を読み進めながら私が連想した小説は『さよならジュピター』(小松左京)、『あとは野となれ大和撫子』(宮内悠介)、『三体』(劉慈欣)、『ユートロニカのこちら側』(小川哲)などだ。と言っても、もちろん独自性はあり、100年後の世界の日常がリアルに感じられる。火星と地球との間の通信において発生する5分以上のタイムラグの描き方は巧みだ。このタイムラグは小説全体のテーマに関わっている。
この小説には、火星のコロニーを運営する会社のCEOであるルーク・マディソンという人物が登場する。地球でも指折りの大富豪だったが、ある日突然火星に移住してきた変わり者である。イーロン・マスクを連想させるようにも見えるが、よくわからない人物だ。私は最後までルークの人物像をイメージできなかった。それが不満である。私の読解力の問題もある。だが、ルーク・マディソンという奇妙な人物をより深く造型すれば、この小説はもっと面白くなったと思う。
『火星の女王』(小川哲/早川書房/2025.10)
5年前この作家の『ゲームの王国』に圧倒されて以来、『ユートロニカのこちら側』、『地図と拳』、『君のクイズ』、『君が手にするはずだった黄金について』をどれも面白く読んだ。だが、書店の店頭に積まれている『火星の女王』を手にしたとき、露骨なSFタイトルに少し躊躇した。タイトルから連想するようなスペース・オペラではなく、近未来の火星と地球を舞台にしたリアルな物語のようだ。いずれ読むにしても後回しでいいやと思って平積み棚に戻した。
後日、この小説がNHKのTVドラマで年末に放映されると知った。ドラマを観てから読むより読んでから観る方がいいので、あわてて入手して読んだ。小説を映像化した作品の面白さが小説を超えることはあまりない。特にSF場合、ドラマや映画の映像を小説の「挿絵」のひとつとして楽しむのがいいと私は感じている。だから、映像を観る前に小説を読んでおくのがいい。「SFは絵だねぇ」という言葉もある。
『火星の女王』は面白いSFだったが、物足りなさを感じた。いままでどこかで読んだSFの寄せ集めのようにも思え、やや期待外れだった。
この小説を読み進めながら私が連想した小説は『さよならジュピター』(小松左京)、『あとは野となれ大和撫子』(宮内悠介)、『三体』(劉慈欣)、『ユートロニカのこちら側』(小川哲)などだ。と言っても、もちろん独自性はあり、100年後の世界の日常がリアルに感じられる。火星と地球との間の通信において発生する5分以上のタイムラグの描き方は巧みだ。このタイムラグは小説全体のテーマに関わっている。
この小説には、火星のコロニーを運営する会社のCEOであるルーク・マディソンという人物が登場する。地球でも指折りの大富豪だったが、ある日突然火星に移住してきた変わり者である。イーロン・マスクを連想させるようにも見えるが、よくわからない人物だ。私は最後までルークの人物像をイメージできなかった。それが不満である。私の読解力の問題もある。だが、ルーク・マディソンという奇妙な人物をより深く造型すれば、この小説はもっと面白くなったと思う。
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