『君のクイズ』(小川哲)は秀逸なクイズ小説2023年01月10日

『君のクイズ』(小川哲/朝日新聞出版)
 小川哲氏の新作長編を読了。一気読みだった。

 『君のクイズ』(小川哲/朝日新聞出版)

 事前に新聞記事などで、ゼロ文字回答を巡るクイズ小説だとは知っていた。早押しクイズは、問題の全文を読み上げる前に、問題文を推測してボタンを押すことが多い。問題文を何文字目まで読んだ時点でボタンを押せるかが勝負である。そんなクイズで、ゼロ文字つまり問題文を読む前にボタンを押して回答した人物がいた。なぜ、そんなことが可能だったのかというミステリーである。

 この小説を読む前に、どうすればゼロ文字回答が可能か、いろいろ考えてみた。眉村卓の初期SF『クイズマン』のような超能力はないだろう。ITで超能力もどきを実現するのも難しそうだ。思い浮かぶのは映画『スラムドッグ$ミリオネア』で、あの映画では回答者の個人的な体験が回答に結びついていた。だが、どんな個人的体験を積めばゼロ文字回答が可能か、どう考えてもわからない。この小説自体がクイズだ。

 読み終えて感服した。多少の無理を感じなくもないが、見事な論理展開である。アナウンサーが「問題です」と言った時点で、なぜ問題文を予測できたのかを説得的に解明している。

 このクイズの設定は、テレビの生番組であり、クイズ強者同士の決勝の最終場面である。ボタンを押して誤答なら即敗退、正答なら優勝、絶対の自信がなければボタンは押せない。問題文を読み上げる前にボタンを押せば視聴者がヤラセと疑う可能性もある。なぜ、ゼロ文字回答になったのか。

 クイズを取り巻くさまざまな状況を巧妙にストーリーに絡めているところに、この小説の面白さを感じた。

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