あやつり人形と人間が共演する『少女仮面』に記憶が重なる2023年03月20日

 赤坂レッドシアターで「糸あやつり人形 一糸座」の『少女仮面』(作:唐十郎、演出:天野天街)を観た。3年前の2020年5月、コロナで中止になった公演である。

 あやつり人形の芝居を観るのは初めてである。今回は人形と人間の役者が共演するとのこと、どんな舞台になるのか楽しみだった。そもそも『少女仮面』は腹話術の人形と腹話術師が入れ替わるシーンもあり、人間と人形が複雑に絡むのだろうと予感した。

 一糸座代表・江戸伝内(三代目結城一糸)は、寛永年間から続く結城座・十代目結城孫三郎の三男で、私と同じ1948年生まれ、2003年に結城座から独立したそうだ。

 チラシの出演者紹介には「人形群」に6人の人形遣い、「役者群」に4人の役者を載せている。人形遣いは人形をあやつりながら科白もしゃべる。この形だと普通の芝居のように人間とも絡みやすそうに思える。もちろん、人間と人形はサイズが違う。にもかかわらず舞台が成り立つのが演劇の面白さだ。

 ラスト近くでは、この戯曲の人形でしか実現できない異様な演出もあった。肉体を奪われた(?)春日野を演じる人形(江戸伝内)が骨組みを晒すのである。

 私は3年前に若村麻由美主演の『少女仮面』月舟さらら主演の『少女仮面』 を観ている。1982年の渡辺えり子主演も観ている。だが、李礼仙主演の状況劇場の『少女仮面』(1971年)は観ていない――と、つい最近まで思い込んでいた。だが、今回の観劇に先立って戯曲を再読したり上演記録を眺めているうちに、状況劇場版も観ていると思えてきた。いくつかの場面の記憶が頭の中によみがえってきたのだ。そして、今回の一糸座の舞台を観て、やはり1971年に『少女仮面』を観たはずだと確信した。

 今回の舞台には往年の状況劇場の怪優・大久保鷹(79歳)が甘粕大尉の役で出演している。彼は半世紀以上前の紅テントでも同じ役だった。やや老いた大久保鷹が演じる甘粕大尉を眺めていて、若き日の大久保鷹が甘粕大尉に扮した姿が頭の中に現れた。半世紀前に大久保鷹の甘粕大尉を観たと思い出した――そう確信したのである。

 観劇前にも、古い記憶が懐かしくよみがえる体験をした。ネットには公演前インタビュー記事 が載っていて、そのリンク先に3年前(コロナで中止)の記事がある。そこで結城一糸(現・江戸伝内)が、唐十論作品との出会いを次のように語っている。

 「10代の終わりに三鷹の本屋の店先で、うず高く積まれた『ジョン・シルバー』(初演:1965年、出版:1969年)を手にとったのが最初です。」

 江戸伝内と同年の私も、彼とまったく同じ体験をしている。当時、唐十論の本が新本屋に積まれることはない。この本屋は三鷹駅南口の古本屋「民衆書房」である。『ジョン・シルバー』の版元は天声出版で、この出版社が倒産してゾッキ本として大量の『ジョン・シルバー』が何らかの事情で三鷹の古本屋に流れた――私はそう推測している。なぜか、この古本屋にだけ大量の『ジョン・シルバー』が積まれていた。その1冊を購入したのが1969年7月(本にメモがあった)、紅テント初体験(1969年12月の「少女都市」)の5カ月前だった。

 そんな思い出とは別に、今回の観劇での大きな感動は、カーテンコールのとき、客席の唐十郎(83歳)が紹介されたことだ。前方の席にいた私がふりかえると、満場の拍手に手を振る唐十郎の姿があった。

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