本物の元宝塚スターが春日野を演じる『少女仮面』2020年02月20日

 先月、シアタートラムで『少女仮面』(作:唐十郎、演出:杉原邦生、主演:若村麻由美)を観たのに続いて、中野のテアトルBONBONという小さな劇場でmetro第12回公演『少女仮面』(作:唐十郎、演出:天願大介、主演:月舟さらら)を観た。上演後にはトークショーもあった。

 シアタートラムの『少女仮面』はかなりモダンでパステルカラー風だったが、今回の舞台は紅テントのような泥絵の具風でもなく、あえて言えば薄塗りの油絵のような趣だった。アングラ風に近い。

 主演の月舟さららは宝塚で10年間男役スターとして活躍して2005年に退団した女優だそうだ。本物の元宝塚スターが『少女仮面』の春日野八千代を演ずるのだから、まさに適役である。劇団唐組を率いる久保井研も腹話術師として出演している。かつては唐十郎が演じた「少女フレンドを抱えた老婆」を演じた村中玲子の冒頭の唄と「何よりも、肉体を!」で終わる科白に往年のアングラの空気を感じた。

 なぜかチラシが制服少女姿なので、どんな演出なのだろうとヒヤヒヤしたが、チラシはあくまでイメージ写真で、舞台にこんなシーンはない。変な言い方になるが、オーソドックスなアングラ風なので安心して楽しめた。

 上演後のトークショーで、元宝塚の月舟さららが、退団後にこの戯曲を読んで、なぜこんなに宝塚スターのことがわかるのだろうと驚いたと語ったのに驚いた。宝塚の大スターが観客によって肉体を失われ「私の肉体を返してくれ」と叫ぶ姿に月舟さららが共感したのである。そんな「読み」があるのかと新鮮だった。演出の天願大介が「月舟さんの言う肉体と唐さんの言う肉体は、おそらく違うものだと思う」と語ったことに私も同意する。でも、唐十郎の「特権的肉体論」の意外な拡散を面白く感じた。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
ウサギとカメ、勝ったのどっち?

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://dark.asablo.jp/blog/2020/02/20/9216078/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。