生きるのが面倒くさい人が増えているらしい2022年11月13日

『生きるのが面倒くさい人:回避性パーソナル障害』(岡田尊司/朝日新書/朝日新聞出版)
 精神科医が書いた次の新書を読んだ。

 『生きるのが面倒くさい人:回避性パーソナル障害』(岡田尊司/朝日新書/朝日新聞出版)

 生きるのが面倒になったから読んだわけではない。というか、すでに七十余年という十分な時間を生きてしまった私には縁遠い話題で、いまさら「面倒くさい」と言える立場でもない。

 本書を読もうと思ったのは、半年前に読んだ『星新一の思想』(浅羽通明)で紹介されていて興味を抱いたからである。星新一をアスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)と見なしている浅羽通明氏は次のように述べている。

 「精神科医岡田尊司は『生きるのが面倒くさい人』第7章の16頁分を、星新一のパトグラフィに充てました。岡田の診断によると星新一はアスペルガーよりも回避性人格のようです。」

 本書のメインテーマである「回避性パーソナル障害」を十分に理解できたわけではないが、「生きるのが面倒くさい」「人生の選択を先のばしにする」「自己評価が低い」「無気力」「ひきこもり」などの性向のようだ。

 本書では、そんな傾向が見られる著名人として、星新一の他に井上靖、サマセット・モーム、藤子・F・不二雄、村上春樹、森鴎外などの事例を紹介している。そして、精神科医である著者自身が回避性パーソナル障害だったとし、自分自身も分析対象にしている。勤務医だった著者は、現在は自分のクリニックを開業し、ひきこもり患者の社会復帰などを手助けしているそうだ。

 回避性パーソナル障害の原因は、遺伝的要素もあるが、家庭環境を含めた社会的要因が大きく、時代とともに世界レべルで増加傾向にあるらしい。村上春樹ではないが「やれやれ」という気分になる。

 本書の後半は、回避性パーソナル障害の若者たちが社会に出て行くための具体的アドバイスである。年寄りの私は、いまの若者たちは大変だなあと同情しつつも、しっかり生きてくれと期待するしかない。