『草原とオアシスの人々』(護雅夫)は批判と主張の書2020年08月27日

『草原とオアシスの人々(人間の世界歴史7)』(護雅夫/三省堂)
『草原とオアシス』(山田信夫)に続いて、似たタイトルの次の本を読んだ。

 『草原とオアシスの人々(人間の世界歴史7)』(護雅夫/三省堂)

 「人間の世界歴史」という叢書の1冊で1984年の刊行である。先日読んだ『宋と中央ユーラシア(世界の歴史7)』で梅村坦氏は、本書の著者を「突厥史研究に偉大な足跡を残して1996年末に他界した護雅夫」と紹介し、ソグド人の活躍に関する文章を引用していた。

 本書は歴史概説書というよりは、著者の意見表明と研究発表の書で、やや専門的な内容だが、興味深く読めた。

 著者は、中央ユーラシアの草原とオアシスの人々の歴史を概説しつつ、間野英二氏の「脱シルクロード論」への批判を展開している。この論争については、 『シルクロードと唐帝国』(森安孝夫) で知り、発端となった 『中央アジアの歴史』 も読んだ。学者の論争を外野から眺めるのは面白い。

 「脱シルクロード論」とは、中央アジアの歴史を東西交渉で見ることを否定し、南北の関係を重視し、外部からの視点ではなく内側から中央アジア史を解明しなければならないという「論」である。著者は本書において、この「脱シルクロード論」を強く批判している。門外漢の私が学者の論争を評価できるわけではないが、著者の批判の内容は私には納得できるものだった。

 本書のもう一つの柱は、突厥の信仰や儀礼(シャーマニズム)に関する考察と、突厥碑文と呼ばれるオルホン碑文とイェニセイ碑文に関する著者の研究結果の紹介である。かつてモンゴル高原に暮らしていた古代トルコ人の様子を探求する学術的な内容で、門外漢がその論旨展開についていくのは骨が折れる。それでも、雰囲気をつかむことはでき、面白く読めた。

 終章の「草原世界とオアシス世界」では長期にわたって活躍したソグド人への言及が多い。ここでは、間野氏の見解を紹介し、その成果を評価しつつも、随所で間野批判を展開している。そして、次の言明で締めくくっている。

 「中央アジアは「東西交渉史からは独立した、完結した一つの小世界」では断じてない。まさしく、中央アジア史は、その独自・固有の歴史を中心にすえつつも、「八方にらみ」の歴史でなければならぬのである。わたしは、この言葉によって、この蕪雑きわまる小著をとじたいと思う。」

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