複雑な内陸アジア史をコンパクトに復習2020年08月13日

『内陸アジア(地域からの世界史 6)』(間野英二・中見立夫・堀直・小松久男/朝日新聞社/1992.7)
 トルグン・アルマスの『ウイグル人』は、思いっきりウイグル人視点の中央アジア史で、あれもこれもウイグル人になっていた。歴史の見方はそれぞれだろうが、一般的な見方の確認を兼ねて中央アジア史をおさらいしておこうと思い、次の本を読んだ。

 『内陸アジア(地域からの世界史 6)』(間野英二・中見立夫・堀直・小松久男/朝日新聞社/1992.7)

 古代から現代までの内陸アジア史を約200ページで概説したコンパクトな歴史書である。かなり以前に入手して未読だった。4人の研究者による共著で、「18世紀まで」と「19世紀以降」の2部に分かれている。全体の7割に近い「Ⅰ 紀元前から18世紀まで」は間野英二氏が執筆している。

 昨年の夏、間野氏の 『中央アジアの歴史』 『バーブル:ムガル帝国の創設者』 を読んだが、その内容がおぼろになってきてたので、本書が復習になった。

 第1部で、この地域の歴史は草原の遊牧民とオアシス都市の定住民との対立と相互依存が絡み合った歴史であり、トルコ化とイスラーム化という大きな流れがあることを再認識した。もちろん、ウイグル人も大きなウエイトを占めている。チンギス・ハーンの登場に関して、次のように記述している。

 「9世紀におけるウイグル王国(744-840)の崩壊後、実におよそ350年という長い年月を経て、モンゴリアに、ふたたびひとりのハーンが支配する強力な遊牧国家が誕生したのである。」

 19世紀以降を記述した第2部は「モンゴルとチベット」「中国と内陸アジア」「ロシア・ソ連と内陸アジア」の地域別になっていて、3人の執筆者がそれぞれの地域の19世紀以降の歴史を概説している。私はこの地域の現代史はほとんど知らなかったので、勉強になった。

 なぜモンゴルが独立できてチベットは独立できなかったのか、新疆ウイグル自治区はどのようにしてできたのか、中央アジアの五つの国(カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、キルギス)の産業や国境ができる経緯など、興味深い問題がいろいろ提示されている。

 「現代のウイグル」については、1934-35年頃から公用されはじめ定着していった民族名とし、次のように述べている。

 「トルコ系言語を使い、オアシスに定住し、イスラーム教徒であって、清朝以来の中国領に住んでいる、あるいは住んでいた人びとがウイグル族とされた。要するに中国支配の下のトルコ系イスラーム教徒定住民がウイグル人となったわけで、民族が国境によって創られたということができる。」

 本書はソ連崩壊の翌年(1992年)の発行なので、それ以降に発生したタジキスタン内戦などは語られていない。それにしても、清朝末期とロシア帝政の19世紀から現代までの約200年、大国のはざまの内陸アジア地域の情況変転は目まぐるしい。この地域に限ったことではないが……