『米軍が最も恐れた男カメジロー 不屈の生涯』を観た2019年10月09日

 那覇市の桜坂劇場で映画『米軍が最も恐れた男カメジロー 不屈の生涯』(監督:佐古忠彦)を観た。2年前に同じ劇場で観た『米軍が最も恐れた男 その名はカメジロー』のPart2にあたるドキュメンタリー映画である。128分の長編だが長さを感じさせず、前作以上に印象深かった。

 カメジローとは瀬長亀次郎、米軍占領下の沖縄の闘士である。投獄生活の後、那覇市長に選出されるも米軍圧力下の市議会の不信任決議で追放される。本土復帰時には衆議院議員に選出される。

 今年70歳の私は沖縄復帰の頃は大学生だった。瀬長亀次郎という人物は子供の頃から新聞やテレビで知っていたと思う。彼が那覇市長を追放されたのは私が小学三年の時だが、この人物が子供心に記憶に残っているのは、その独特な風貌と愛嬌を感じさせる名前のせいだろう。印象深い政治家だったのである。

 本土復帰の頃の瀬長亀次郎には「国会議員に成り下がって、一回り小さくなった」と感じた。1960年代末の騒然とした時代、新左翼が「沖縄奪還」と叫んでいたら、佐藤栄作首相によって「沖縄返還」が粛々と進み、全軍労闘争が展開された。そして数年後には佐藤栄作にノーベル平和賞が授与された。釈然としないヘンテコな時代だった。この映画であの頃の気分が甦ってきた。

 この映画の圧巻は亀次郎と佐藤栄作との国会での論戦場面である。前作にも同じ場面があったが、Part2はより詳細に描いている。やはり、亀次郎には迫力がある。佐藤栄作は今の安倍首相の祖父(岸信介)の弟で、当時の多くの学生にとっては最大の敵役だった。いま映像で観ると、団十郎と呼ばれたのもうなずける役者ぶりで、それなりの人物にも見えてきて、現首相をはじめ現在の政治家の矮小さが情けなくなる。己の若かった時代が大きく見えるのは年のせいかもしれないが。

 この映画でハッとしたのは「米国には沖縄の基地存続こそが最大の課題で、その手段として沖縄を返還した」というカメジローの国会論戦での指摘である。「沖縄占領」がまねく抵抗運動拡大の中で基地を維持するのは困難であり、基地維持には返還がいいとた判断したというのである。当然ながら佐藤栄作はカメジローのこの見解を否定する。

 それから半世紀経った現状を見るとカメジローに首肯せざるを得ない。

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