紅テントで『ビニールの城』を観た2019年10月19日

 下北沢の空き地(小田急線跡)で劇団唐組のテント芝居『ビニールの城』(演出:久保井研+唐十郎)を観た。1985年、唐十郎が劇団第七病棟(石橋蓮司、緑魔子)に書き下ろした作品だそうだ。3年前、宮沢りえ主演でシターコクーンで上演されたとき、観たいと思ったがチケットを取れなかった。その『ビニールの城』を今回、初めて観ることができた。

 満員の盛況で、テント桟敷の観客をいっせいの掛け声で押し込むさまに往年の状況劇場を想起した。ざっと見たところ、私のような高齢者観客は約3割で若い観客も多い。

 出演者は私には未知の役者ばかりだが、唐十郎独特の幻術のような言語空間に拮抗する好演に感心した。かつては、唐十郎世界を現出できるのは往年の怪優たちだけだと感じていたが、時が移れば新たな役者の肉体に受け継がれていくのだと気づいた。

 今回は事前に戯曲を読む機会がなく観劇した。でも、この芝居に懐かしさを感じてしまう。唐十郎の世界は論理と感性がゴチャゴチャになり、わかりにくさとわかりやすさが同居している……というか違う次元ですれ違っている。くり返し観たくなるのは面白いからだが、その面白さの内実は半世紀経ってもつかめていない。つかめそうでつかめないから魅力がある。