4姉妹の華やかなタンゴが力強い『花よりタンゴ』 ― 2026年05月18日
紀伊國屋サザンシアターでこまつ座公演『花よりタンゴ』(作:井上ひさし/演出:栗山民也/出演:高橋克実、朝海ひかる、南沢奈央、大原櫻子、平体まひろ、他)を観た。
初演は1986年、井上ひさしは「昭和庶民伝三部作」の第ニ部としてこの作品を書いたが、作者としては満足できる作品でなく、三部作から外した。だが、栗山民也が「面白い」と言って作者生前に再演した――という経緯を、この公演のパンフレットで知った。
私は『花よりタンゴ』のみならず「昭和庶民伝三部作(『きらめく星座』『闇に咲く花』『雪やこんこん』)」も観たことがなく、戯曲も読んでいない。今回の公演のチラシを見て、面白そうだと思ってチケットを手配した。
期待通りの面白い芝居だった。井上ひさしがこの作品を不本意に感じたのは、面白く書き過ぎたせいかもしれない。
開演前の舞台に緞帳が降りている。緞帳の左下に「銀座ラッキーダンスホール」の文字がある。この緞帳も舞台装置の一部なのだ。緞帳が上がると、ややクラシックなホールが現れる。上手でピアノ演奏、それに合わせて若い女性が歌っている。歌唱練習のようだ。
時代は終戦から2年後の1947年、場所は銀座のダンスホール。このダンスホールを経営しているのは元男爵家の4姉妹(朝海ひかる、南沢奈央、大原櫻子、平体まひろ)である。下の二人はまだ学生だ。冒頭で歌っていたのは歌手志望の三女だった。
終戦によって財産を失った4姉妹は、このダンスホールを経営しながらここで暮らしている。ダンスホール経営は順調とは言えず、家賃が滞っている。家主に手付金を払ってホールの新たな借り手として乗り込んで来た成金男は、4姉妹のかつての使用人だった――。
没落貴族と元使用人の話である。『桜の園』を思わせる。芝居の雰囲気にチエホフに通じるが、4姉妹はチエホフの登場人物よりは生命力旺盛である。浮沈の激しい成金男(高橋克実)には、したたかな愛嬌がある。
4人姉妹モノは、やはり華やかだ。4人が力強くタンゴを踊るシーンがいい。庶民の対極にある存在への批判的メッセージを秘めた芝居だとは思う。だが、ドタバタ劇を含んだテンポの速い展開は、時代の変転に翻弄されながらも、くじけることなく生き延びていく人々の活力を謳った愉快な芝居に感じられた。
ミラーボールや緞帳の文字が昭和レトロを醸し出しているが、それも終戦直後の元気な昭和を想起させる。
初演は1986年、井上ひさしは「昭和庶民伝三部作」の第ニ部としてこの作品を書いたが、作者としては満足できる作品でなく、三部作から外した。だが、栗山民也が「面白い」と言って作者生前に再演した――という経緯を、この公演のパンフレットで知った。
私は『花よりタンゴ』のみならず「昭和庶民伝三部作(『きらめく星座』『闇に咲く花』『雪やこんこん』)」も観たことがなく、戯曲も読んでいない。今回の公演のチラシを見て、面白そうだと思ってチケットを手配した。
期待通りの面白い芝居だった。井上ひさしがこの作品を不本意に感じたのは、面白く書き過ぎたせいかもしれない。
開演前の舞台に緞帳が降りている。緞帳の左下に「銀座ラッキーダンスホール」の文字がある。この緞帳も舞台装置の一部なのだ。緞帳が上がると、ややクラシックなホールが現れる。上手でピアノ演奏、それに合わせて若い女性が歌っている。歌唱練習のようだ。
時代は終戦から2年後の1947年、場所は銀座のダンスホール。このダンスホールを経営しているのは元男爵家の4姉妹(朝海ひかる、南沢奈央、大原櫻子、平体まひろ)である。下の二人はまだ学生だ。冒頭で歌っていたのは歌手志望の三女だった。
終戦によって財産を失った4姉妹は、このダンスホールを経営しながらここで暮らしている。ダンスホール経営は順調とは言えず、家賃が滞っている。家主に手付金を払ってホールの新たな借り手として乗り込んで来た成金男は、4姉妹のかつての使用人だった――。
没落貴族と元使用人の話である。『桜の園』を思わせる。芝居の雰囲気にチエホフに通じるが、4姉妹はチエホフの登場人物よりは生命力旺盛である。浮沈の激しい成金男(高橋克実)には、したたかな愛嬌がある。
4人姉妹モノは、やはり華やかだ。4人が力強くタンゴを踊るシーンがいい。庶民の対極にある存在への批判的メッセージを秘めた芝居だとは思う。だが、ドタバタ劇を含んだテンポの速い展開は、時代の変転に翻弄されながらも、くじけることなく生き延びていく人々の活力を謳った愉快な芝居に感じられた。
ミラーボールや緞帳の文字が昭和レトロを醸し出しているが、それも終戦直後の元気な昭和を想起させる。

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