紅テントの『鉛の兵隊』はイラク戦争への自衛隊派遣が種2026年05月16日

 新宿花園神社境内の紅テントで劇団唐組公演『鉛の兵隊』(作:唐十郎、演出:久保井研、出演:久保井研、藤井由紀、加藤野奈、大鶴美仁音、福本雄樹、友寄有司、影山翔一、他)を観た。

 この芝居、初演は2005年の唐組公演で、その後も再演されているそうだが、私は今回が初見である。テントの売店で文庫本サイズの戯曲を売っていたので購入し、観劇後に目を通した。

 かなり入り組んだ芝居である。舞台を一回観て、おおまかな雰囲気を楽しんだ気分にはなるが、いま一つ内容をつかみきれない。観劇後に戯曲に目を通し、『唐十郎のせりふ』(新井高子)の『鉛の兵隊』に関する論評を読み返し、「そういうことだったのか」と事後に得心するシーンがいくつもあった。

 唐十郎の芝居は夢幻的異世界に見えて、現実世界に根差した材料が散りばめられている。現実社会の取材で得た情報と唐十郎の脳内に蓄積されたアレコレが溶融して「もうひとつの世界」が立ち上がってくる。

 『鉛の兵隊』のメイン素材はイラク戦争でイラク南部のムサンナ州に派遣された自衛隊員であり、第二次大戦時に旭川からガダルカナルに派遣された陸軍第七師団である。それに、アンデルセン童話「鉛の兵隊(実は「錫の兵隊」)を絡めている。主人公の二風谷やヒロイン(?)の小谷にアイヌの血が流れているとは、うかつにも観劇中には気づかなかった。聞きなれない「シチカップ(鷹)」「ホルケウ(狼)」という言葉を受け取り損ねていたのだ。

 全2幕の芝居である。1幕目の舞台は「スタント店ドタンバ」、2幕目は下水口がある半地下の不思議な空間で、「渦屋」という資源回収業風の<指紋屋>がある。スタントとは要は「身代わり」業であり、戦場に赴く自衛隊員の「身代わり」が発端だ。乱暴に単純化すれば、戦場の事故で失った指紋を巡る物語である。何故か中勘助の『銀の匙』が絡んでくる。

 アンデルセンの「錫の兵隊」は子供の時に読んだかすかな記憶があるもののほとんど失念している。観劇後にネットの青空文庫で「しっかり者のすずの兵隊」を読んだ。かなりヘンな話だと再認識した。

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