観劇前に戯曲『マリア・ストゥアルト』を読んだ2026年04月07日

『悲劇 マリア・ストゥアルト』(シラー/相良守峯訳/岩波文庫)
 今月中旬、舞台『メアリー・スチュアート』(出演:宮沢りえ、若村麻由美、他)を観劇予定だ。スコットランド女王メアリー・スチュアートとイングランド女王エリザベス1世の話らしいが、どんな内容かよく知らない。観劇前にシラーの戯曲を読もうと思い、「メアリー・スチュアート」でネット検索すると次の本が出てきた。

 『悲劇 マリア・ストゥアルト』(シラー/相良守峯訳/岩波文庫)

 タイトルが違うと思ったが、マリア・ストゥアルトはメアリー・スチュアートのドイツ語表記だった。ドイツ人シラーが書いた戯曲だからマリア・ストゥアルトなのだ。と言っても、イギリス王室の話のドイツ語表記には違和感がある。

 舞台『メアリー・スチュアート』を観たいと思ったのは、出演者に惹かれたのに 加え、先日『ヴァロア朝』(佐藤賢一)を読んだからである。生後6日でスコットランド女王になったメアリー・スチュアートは、未来のフランス王妃として6歳からフランス王宮で育てられた。だが、夫のフランス王は早世する。フランス読みだとマリー・ステュアールの彼女について、佐藤氏は次のように述べている。

 「マリー・ステュアールというのは、その美貌ゆえに波乱の人生を余儀なくされ、最後はイングランド女王エリザベス1世に斬首されて果てたという、あの伝説のスコットランド女王メアリー・スチュアートのことなのだ。(…)王妃(マリー・ステュアール)自身は政治家という玉ではなかった。この方面に才覚があれば、あんな支離滅裂な人生を送るわけがない。」

 この一節を読んで、どんな支離滅裂な人生を送ったのだろうと興味がわいた。で、芝居のチケットを手配し、戯曲を読んだのである。

 『悲劇 マリア・ストゥアルト』はメアリー・スチュアートの支離滅裂な人生そのものは描いていない。その果ての最期の3日間を描いている。

 スコットランドからエリザベスを頼って逃れて来たメアリーは、イングランドの王宮に幽閉され軟禁生活を送っている。エリザベスにとって彼女は、色仕掛けなどの手練手管でイングランド王位を狙う危険人物である。そして、ある証言をもとに彼女への死刑が宣告され、エリザベスの意に反して刑が執行されてしまう――という戯曲である。面従腹背の登場人物たちの右往左往の展開も面白い。

 戯曲の軸はメアリーとエリザベスという二人の女王である。この二人、芝居が始まった時点(処刑の3日前)では顔を合わせたことがない。前段はメアリーが軸、中盤で二人の面会、後段はエリザベスが軸、という構成がわかりやすい。

 冒頭近くでメアリーの乳母がメアリーに「あなた様の罪といえば、軽はずみということだけでございます」と語る。佐藤氏の言う「支離滅裂な人生」を想起し、ニヤリとしてしまった。二人の女王が背負った人生を3日に反映させた戯曲だ。