阿刀田高氏の短編集4冊をまとめ読み2026年04月09日

 阿刀田高氏の『90歳、男のひとり暮らし』を読んだのを機に阿刀田氏の短編集4冊をまとめ読みした。

 『ナポレオン狂』(阿刀田高/講談社文庫)
 『一ダースなら怖くなる』(阿刀田高/文春文庫)
 『冷蔵庫より愛をこめて』(阿刀田高/講談社文庫)
 『おいしい命:阿刀田高傑作短編集』(阿刀田高/集英社文庫)

 前2冊はかなり以前に読んだ文庫本の再読、後2冊は新たに入手した。4冊で短編54編になる。以前に読んでいても内容を忘れている話が多く、新鮮な気分で読んだ。大半が私好みのブラック・ユーモアである。面白かった。

 実は、私は阿刀田氏の「いい読者」とは言えない。『ギリシア神話を知っていますか』などの古典解説本は何冊か読んだし、長編の『新トロイア物語』『獅子王アレクサンドロス』も読んだ。だが、阿刀田氏の本領である短編小説(何十冊もある)は文庫本2冊を昔読んだだけで、その内容もほとんど失念している。

 阿刀田氏は『90歳、男のひとり暮らし』のなかで「昨今は長編小説は読まない」「短編を偏愛している」と述べている。そして「自惚れの本棚から――仕事」という章では、編集者に乞われて自身が書いた900編を越える短編から好きな15編を選び、自作を語っている。

 自選15編はすべて私の知らない作品だった。で、私は阿刀田氏の「いい読者」ではなかったと自覚したのである。そして、この機会に阿刀田氏お気に入りの何編かを読んでみようと思った。

 今回私が読んだ54編には、阿刀田氏が挙げた15編の内の7編が含まれている。私が面白いと思ったのは『結婚嫌い』『閉じた窓』『来訪者』『サン・ジェルアマン伯爵考』『ゴルフ事始め』『狂暴なライオン』『幸福通信』『ギャンブル狂夫人』『掌の哲学』『独りぼっち』である。作者の自選と重なるのは4編だった。

 4冊読むと、阿刀田氏の作風とその独自性が少し見えた気がしてくる。機知に富んだブラック・ユーモアや恐怖小説がベースで、ニヤリと笑わせる艶笑譚の要素も大きい。『掌の哲学』のサルトルや『サン・ジェルアマン伯爵考』のように蘊蓄や知性を忍び込ませる技もある。日常生活を超越したシャレた世界のようでいて、世相・風俗や人間の生理などのやや下世話で辛辣な要素も取り込んでいる。その結果、奇妙な味の小説世界が紡ぎ出される。

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