ユニークな串田『マクベス』を観た2025年04月30日

 すみだパークシアター倉でフラインングシアター自由劇場公演『そよ風と魔女たちとマクベスと』(原作:シェイクスピア『マクベス』より、翻訳:松岡和子、脚色・演出・美術:串田和美、出演:大空ゆうひ、串田十二夜、他)を観た。

 マクベスをかなり潤色した串田マクベスである。大半の台詞や大筋はマクベスだが、中世イギリスとは別の異世界マクベスになっている。マクベス以外の全員が魔女であり、“そよ風”でもある、という設定だ。

 舞台装置は極めてシンプル。串田十二夜(和美の息子,孫一の孫)が演じるマクベスは茶髪・革ジャン・ジーンズ・ブーツといういでたちである。マクベス役以外の7人の役者たちは複数の役を演じ分ける。舞台上でバンクォーが魔女に変身したりもする。というか、魔女たちがいろいろな役を演じ分けているように見える。 

 シェイクスピアの設定や台詞はいくつか改変されている。新たに挿入したシーンもある。その部分がとても面白い。

 殺されたダンカン王と殺されたバンクォーが楽器を奏でながら登場し、漫才コンビのような掛け合いをくり広げたりする。マクベス夫人が自分には名前がないと嘆いたりもする。シェイクスピアがマクベス夫人に名前をつけなかった件について、渡辺えりの憤慨した文章を読んだのを思い出した。

 原作のラストでは、マクベスとマクダフの一騎打ちでマクベスが死ぬ。本作では、一騎打ちはいつの間にか様式的な戦闘ショーのようになり、観衆(魔女たち)の前でいつまでも闘い続ける。その合間には、老いた晩年のマクベスがマクベス夫人(若いまま)と年寄りじみた会話を交わしながらダンスをするシーンが挿入される。驚いた。

 そんな白昼夢のようなシーンの後もマクベスとマクダフの一騎打ちは続く。だが、それは遠景になり、軽やかなカントリー調の音楽が流れるなかで二人の魔女が遠い昔を懐かしむような台詞を交わして幕になる。「そよ風」と「マクベス」という不思議な取り合わせのユニークな芝居だった。