ダンテの『神曲』を読む前に……2023年09月05日

『やさしいダンテ〈神曲〉』(阿刀田高/角川文庫)、『ドレの神曲』(原作:ダンテ、訳・構成:谷口絵里也、装画:ギュスターヴ・ドレ/宝島社)
 何とかゲーテの『ファウスト』を読了すると、ダンテの『神曲』を読みたくなった。『ファウスト』と『神曲』は、頭の中でゴチャゴチャになることがある。よく知らないからだ。この際、全訳本を読んできちんと整理・把握しておこうと思った。

 『神曲』(講談社学術文庫)は『地獄篇』『煉獄篇』『天国篇』の3冊から成る。1冊目の『地獄篇』を「注」や「解説」を頼りに半分以上読んだ時点で一旦中断した。ネット検索で見つけて入手した次の概説書2冊を先に読む方がいいと判断したのだ。

 『やさしいダンテ〈神曲〉』(阿刀田高/角川文庫)
 『ドレの神曲』(原作:ダンテ、訳・構成:谷口絵里也、装画:ギュスターヴ・ドレ/宝島社)

 2冊とも読みやすく、短時間で読了できた。

 『やさしいダンテ〈神曲〉』を読んで、古典を面白く的確に解説する阿刀田氏の芸にあらためて感服した。『地獄篇』を途中までしか読んでいない私が抱いたモヤモヤが晴れた気がする。「歴史上のヒーロー、ヒロインの登場する中に、ご近所の事件が紛れ込んだみたいで、場ちがいのような気もするけれど〈神曲〉では珍しいことでない」という指摘に納得した。

 『ドレの神曲』は19世紀の高名な版画家ドレの挿絵134点を収録したビジュアルな本である。大半の頁は、左頁が全面挿絵、右頁が抄訳・解説になっている。見開き挿絵の頁もいくつかある。先日読んだ岩波文庫の『ドン・キホーテ』(前篇後篇 )もドレの挿絵を多数収録していて、楽しめた。

 『地獄篇』を読み進めながら、異界の異様な情景をイメージするのが難しく、ビジュアル表現がほしいと思った。で、ネット検索をして本書を見つけたのだ。ドレの挿絵については阿刀田氏も言及している。息をのむような挿絵が多い。迫力がある。ドレの挿絵は解釈の一例だとは思うが、『神曲』を読み解く手助けになる。

 概説書2冊を読むと『神曲』の概要を把握した気分になった。これで十分という気もするが、乗りかかった船なので全訳版のボチボチ読みを再開しようと思う。

 『神曲』を構成する『地獄篇』『煉獄篇』『天国篇』はほぼ同じ分量である。だが、概説書2冊は『地獄篇』のウエイトが約半分、『煉獄篇』が約三割、『天国篇』が二割前後だ。『地獄篇』が一番面白く、絵にもなりやすいのだろう。『天国篇』は神学談義や怪しい宇宙論になり、少々難解らしい。取り組む前から気分がメゲル。

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