『三人姉妹』でチェーホフ世界に浸った2023年09月25日

 浜松町の自由劇場でunrato公演の『三人姉妹』(作:チェーホフ、翻訳・上演台本:広田敦郎、演出:大河内直子、出演:保坂知寿、霧矢大夢、平体まひろ、ラサール石井、他)を観た。

 先月、『桜の園』 を観た後、戯曲を読み返した。それが2作収録の『桜の園・三人姉妹』 だったので、ついでに『三人姉妹』も再読した。その直後にこの公演を知り、いいチャンスだと思ってチケットを手配した。

 衒いのないオーソドックスな舞台で、百年以上昔のチェーホフの世界を堪能した。2時間55分(休憩を含む)の芝居は、意外にテンポがよく、退屈することはなかった。当然のことだが、戯曲を読むより舞台を観る方がよくわかる。

 場面は地方都市にある三人姉妹の邸宅、姉妹の父親は将軍だったが昨年亡くなった。その地方都市には軍が駐屯していて、邸宅は将校たちのサロンになっている。老軍医は居候(家賃は払っていると思う)だ。このサロンでの姉妹と将校たちとの会話で進行する芝居である。

 戯曲を読んだときは、「哲学的」会話をわずらわしく感じたが、舞台で観るとその滑稽さが浮き上がってくる。登場人物たちの身勝手な思い込みも見えてくる。

 この芝居は一見すると、新しい生活を求めながらも現状から脱出できない暗鬱な状況を描いているように見える。だが、舞台を俯瞰的に眺めると、登場人物たちの「嘆き」が小さく見えてくる。人生や生活がどう展開しようが、さほどの変わりはない――そんな諦観あるいは達観を表しているようにも感じられる。