漫画『虹色のトロツキー 』はアジア主義の物語 ― 2023年02月21日
2カ月前に読んだ小説『地図と拳』
の巻末には大量の参考文献リストがあり、その中に『虹色のトロツキー』が入っていた。評論や専門書が大半のリストに漫画が入っているのを異様に感じた。この漫画に興味がわき、文庫版全8冊を入手して読んだ。
『虹色のトロツキー①~⑧ 』(安彦良和/中公文庫コミック版)
太平洋戦争直前の満州を描いた物語で、主人公は日本人と蒙古人のハーフの将校である。父は日本の軍人(諜報担当か?)、母は蒙古人、主人公が幼いときに両親は謀殺されている。興味深い設定である。ノモンハン事件までを描いた本書には辻正信や石原完爾をはじめ多数の実在人物が登場する。重厚な昭和史漫画、歴史物語である。
私より1歳年長の高名なアニメーター・安彦良和氏の作品を読むのは初めてだ――と思っていたが、本書読了後、4年前に安彦氏の著書『革命とサブカル』 を読んでいたと気づいた。読後感を書いた当時のブログに、知人に勧められて読んだとあるが、その知人が誰だか思い出せない。己の忘却力に感心する。
トロツキーという名をタイトルに入れたことに、全共闘世代の作者の心意気を感じる。トロツキーと満州という取り合わせは意表をつく。満州に作った建国大学に、石原完爾らが亡命中のトロツキーを招聘しようと画策する物語である。どこまでが史実に基づいているか、私にはわからない。
だが、シベリアにユダヤ人の居留地があったという話や満州国がユダヤ人を招き入れようとした話は、どこかで断片的に読んだ記憶がある。あまり深く考えたことがなかったが、満州にユダヤ人を絡めるという発想は秀逸で面白い。物語のスケールが大きく広がる。この着想だけで本書を傑作と見なしていいと思えてくる。
『虹色のトロツキー』と題した本書にトロツキー本人は登場しない。背景的隠然たる存在で、まさに反スタのシンボルのようでもある。だが、本書は世界革命の話ではなく、アジア主義の物語である。五族協和を謳うアジア主義は侵略を取り繕う欺瞞に過ぎなかった。しかし、五族協和の美しい理想を追求する人々もいたであろうとは容易に推測できる。
この漫画を読んで、かつてのアジア主義とは何であったをあらてめて勉強してみたくなった。そこには、国民国家や民族という近代のやっかいな課題やグローバリズムという現代の難しい問題を考えるうえでのヒントがあるかもしれない。
『虹色のトロツキー①~⑧ 』(安彦良和/中公文庫コミック版)
太平洋戦争直前の満州を描いた物語で、主人公は日本人と蒙古人のハーフの将校である。父は日本の軍人(諜報担当か?)、母は蒙古人、主人公が幼いときに両親は謀殺されている。興味深い設定である。ノモンハン事件までを描いた本書には辻正信や石原完爾をはじめ多数の実在人物が登場する。重厚な昭和史漫画、歴史物語である。
私より1歳年長の高名なアニメーター・安彦良和氏の作品を読むのは初めてだ――と思っていたが、本書読了後、4年前に安彦氏の著書『革命とサブカル』 を読んでいたと気づいた。読後感を書いた当時のブログに、知人に勧められて読んだとあるが、その知人が誰だか思い出せない。己の忘却力に感心する。
トロツキーという名をタイトルに入れたことに、全共闘世代の作者の心意気を感じる。トロツキーと満州という取り合わせは意表をつく。満州に作った建国大学に、石原完爾らが亡命中のトロツキーを招聘しようと画策する物語である。どこまでが史実に基づいているか、私にはわからない。
だが、シベリアにユダヤ人の居留地があったという話や満州国がユダヤ人を招き入れようとした話は、どこかで断片的に読んだ記憶がある。あまり深く考えたことがなかったが、満州にユダヤ人を絡めるという発想は秀逸で面白い。物語のスケールが大きく広がる。この着想だけで本書を傑作と見なしていいと思えてくる。
『虹色のトロツキー』と題した本書にトロツキー本人は登場しない。背景的隠然たる存在で、まさに反スタのシンボルのようでもある。だが、本書は世界革命の話ではなく、アジア主義の物語である。五族協和を謳うアジア主義は侵略を取り繕う欺瞞に過ぎなかった。しかし、五族協和の美しい理想を追求する人々もいたであろうとは容易に推測できる。
この漫画を読んで、かつてのアジア主義とは何であったをあらてめて勉強してみたくなった。そこには、国民国家や民族という近代のやっかいな課題やグローバリズムという現代の難しい問題を考えるうえでのヒントがあるかもしれない。

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