『フランケンシュタイン』を精読した気分になる『批評理論入門』2023年06月20日

『批評理論入門:『フランケンシュタイン』解剖講義』(廣野由美子/中公新書)
 57年寝かせた『フランケンシュタイン』を読了した後、ネット検索で次の新書を見つけた。『フランケンシュタイン』を題材にした批評入門らしい。あの小説をどう読み解くのか興味がわき、入手・読了した。

 『批評理論入門:『フランケンシュタイン』解剖講義』(廣野由美子/中公新書)

 著者は英文学の大学教授、本書は以下の批評理論を紹介・解説している。

 「伝統的批評」「ジャンル批評」「読者反応批評」「脱構築批評」「精神分析批評」「フェミニズム批評」「ジェンダー批評」「マルクス主義批評」「文化批評」「ポストコロニアル批評」「新歴史主義」「文体論的批評」「透明な批評」

 大学の講義のような目次を見ると『文学部唯野教授』(筒井康隆)を想起する。私は批評理論を勉強したいのではない。『フランケンシュタイン』をどう批評しているかに興味があるだけだ。そんな私にも読みやすかった。

 著者は多様な批評理論を『フランケンシュタイン』を題材に解説している。さまざまな切り口の『フランケンシュタイン』批評集とも言える。あの小説を読んだ直後に本書を読んだので、『フランケンシュタイン』をていねいに再読した気分になった。

 私が『フランケンシュタイン』でヘンだと感じた部分やツッコミ所の掘り下げもある。複数の語りの入れ子構造になっているこの小説の語り手たちを「信頼できない語り手」と見なせば、小説が紡ぎ出すイメージがよりクリアになった。

 著者がこの小説に関して指摘している事柄の大半は、私が気づかなかった事柄である。そのすべてに共感できたわけではないが、小説とはかくも多様な読み方ができるのかと感服した。

 作者メアリー・シェリーについての興味深い伝記的情報を得られたのも収穫だった。彼女がこの小説を書いたのは19歳のとき、すでにシェリーの子を出産していたが、まだ妻ではなく不倫関係だったそうだ。驚いた。

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