紫テントの『少女都市からの呼び声』は妖艶で夢幻的2023年06月24日

 花園神社境内の紫テントで新宿梁山泊の『少女都市からの呼び声』(作:唐十郎、演出:金守珍、出演:六平直政、風間杜夫、大鶴義丹、水嶋カンナ、他)を観た。観劇直前に戯曲を読んでいたが、戯曲では見えなかった世界を堪能した。戯曲にない「一輪車に乗った島田雅彦」「養老先生」なども登場する。

 この芝居の主要部分は54年前の『少女都市』である。そのときの役者が記憶がある私は、チラシの役者リストを見て、次のように配役を予測した。

 男・田口(大久保鷹が演じた)…大鶴義丹
 少女・雪子(李礼仙が演じた)…水嶋カンナ
 フランケ醜態博士(麿赤児が演じた)…六平直政
 連隊長(唐十郎が演じた)…風間杜夫

 だが、男・田口(主役)は黒髪カツラ姿の六平直政、フランケ醜態博士は金守珍だった。大鶴義丹は〈少女都市〉の外の世界、つまり〈現実〉世界の人物だった。公演パンフを読んで事情がわかった。40年前の『少女都市からの呼び声』初演(状況劇場)のときに男・田口を演じて好評を博したのが六平直政だったそうだ。

 私は54年前に『少女都市』を観て強烈な印象を受けた。だが、その後に戯曲・舞台・CDなどで得た情報が混ざって記憶が改変されている可能性は高い。だから、明確には言い切れないのだが、今回の芝居の『少女都市』の部分は昔の舞台とはかなり違う印象だった。荒々しく怪しい異世界が夢幻的で妖艶な世界に変わっていた。

 『少女都市』を『少女都市からの呼び声』に改変することによって、現実と非現実という重層構造になり、『少女都市』の夢幻性が強調された。そのため、夢幻世界の彼方のもうひとつの幻である「満州・オテナの塔の世界」が弱くなった気がする。

 『少女都市』と『少女都市からの呼び声』は別の芝居ということである。どちらが面白いかは何とも言えない。後者の方が洗練された舞台になっているのは確かだ。