観劇に先立って戯曲『少女都市からの呼び声』を読んだ2023年06月22日

『唐十郎 Ⅰ』(ハヤカワ演劇文庫)
 今週と来月、『少女都市からの呼び声』(作:唐十郎)観劇を予定している。今週は花園神社境内の紫テント、来月は歌舞伎町タワーにオープンしたばかりのシアター・ミラノ座である。舞台の規模は違うが、どちらも金守珍演出だ。

 『少女都市』は観て読んでいるが『少女都市からの呼び声』は未見である。『少女都市からの呼び声』を収録した戯曲集を古書で入手し、観劇に先立って戯曲を読んだ。

 『唐十郎 Ⅰ』(ハヤカワ演劇文庫)

 『少女都市』は私が初めて観た唐十郎の芝居だ。1969年末、渋谷の紅テントで観たときの印象は強烈だった。その後、ハーメルンの笛吹き男に誘われるように紅テントに足しげく通った。

 『少女都市からの呼び声』は『少女都市』から16年後の1985年の作品である。主要登場人物が共通なので『少女都市』の続編だろうと思って戯曲を読んだ。想定とは違う仕掛けに驚いた。『少女都市からの呼び声』は『少女都市』をサンドイッチにした芝居なのだ。劇中の異世界劇が『少女都市』になっている。

 二つの戯曲を確認すると、『少女都市』の約7割がそのまま『少女都市からの呼び声』に挿入されている。割愛されているのは、幕切れ部分と上海ママ(四谷シモンが演じた)が絡むシーンである。

 この戯曲の『少女都市』部分を読んでいると、麿赤児(フランケ醜態博士)、李礼仙(ガラスの少女・雪子)、大久保鷹(男)、唐十郎(連隊長)らが紅テントで演じている姿が目に浮かぶ。

 『少女都市』を挟んだサンドイッチのパンの部分は、「呼び声」が遠くから聞こえるもうひとつの異世界である。劇中に言及があるロバチェフスキー空間のような不思議な構造で複数の世界がつながった芝居だ。

 本書は『少女仮面』と『唐版 風の又三郎』も収録している。この二作は別の版で読んでいるし舞台も複数回観ている。この機会に再読し、唐十郎世界の夢幻を耽悦した。と言っても、戯曲を読むだけで舞台の陶酔感を得るのは難しい。