『世界は笑う』は、私には懐かしい昭和30年代の物語2022年08月13日

 シアターコクーンでケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出の『世界は笑う』を観た。この公演も、先日観た『Q』と同じようにコロナで開幕延期(8月7~11日の公演中止)になり、8月12日が初日だった。私は13日のチケットなので払い戻しをまぬがれた。

 多彩な役者が出演している(チラシ参照)。誰が主演とは言えない群像劇である。上演時間は3時間45分(20分休憩を含む)。かなり長いが退屈はしない。

 喜劇を上演する新宿の三角座(劇団&劇場)をめぐる昭和32年から昭和34年までの物語である。三角座は架空の劇団だが、実在の喜劇役者に言及する科白もあり、何故か川端康成が実名で登場する。当時の喜劇役者たちの世界に詳しい作者が、実在の喜劇役者を架空の登場人物に反映させたと思われる芝居である。

 タイトルや題材から、この芝居はコメディだろうと予感していた。確かにコメディの要素もあるが、コメディの世界をややシニカルに描いたストレートプレイである。喜劇役者の実像は舞台上の姿とは異なり気難しくて怒りっぽかったりもする。そんな当然の姿を昭和レトロの世界で繰り広げる舞台である。

 昭和32年と言えば私は田舎の小学3年生、ほとんど記憶はない。昭和34年頃になるとテレビ番組の記憶がかなり残っている。この芝居が描く昭和32~34年の世界にはひしひしと懐かしさを感じる。芝居の冒頭で、通行人が電気屋の白黒テレビに映っている脱線トリオをに見入って「こいつら面白いな。もうエノケン・ロッパじゃないな」とつぶやく。この感覚もかろうじてわかる。 

 それにしても、私より15歳若いケラリーノ・サンドロヴィッチ(1963年生まれ)が、昭和30年代初期に詳しいのには感心する。

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