少年王者館の『1001』は合わせ鏡の中のような舞台2019年05月24日

 新国立劇場小劇場で少年王者館という劇団の『1001』(作・演出:天野天街)という芝居を観た。1982年に名古屋で旗揚げされた劇団だそうだ。私には未知の劇団である。

 公演チラシの雰囲気から混沌とした妖しげな舞台を想像したものの、どんな芝居なのかの事前知識なしに観劇した。

 休憩なしの2時間強の舞台は、ほとんど途切れることのないセリフ(輪唱的なセリフも多い)の連射で言葉の奔流に圧倒された。登場する役者は数十人、ミラーボールのように乱舞する照明を活用したかなり大掛かりな舞台で、退屈する暇はなかった。

 『1001』というタイトルは『千夜一夜物語』や『一千一秒物語』(稲垣足穂)から発想したそうだ。夢幻的舞台には魔法のランプ、紙芝居、黄金バットなどが登場しキリコの絵のようなシーンもあるが、静謐ではなく猥雑でギャグもふんだんだ。「憎むな、殺すな、赦しましょう」というセリフも出てきたので月光仮面か川内康範が登場するかと期待したが、それはなかった。

 この舞台で感心し面白く思ったのは、合わせ鏡の中のような無限連鎖の世界、醒めても醒めても夢の中という夢幻世界を舞台上でダイナミックに表現している点である。いつまで経っても始まりもしないし終りもしない世界、終りと始まりがつながってしまったような世界である。