『ヒトラー(下)1936-1945 天罰』で第2次大戦の世界に没入 ― 2018年08月25日
『ヒトラー(下)1936-1945 天罰』(イアン・カーショー/福永美和子訳/石田勇治監修/白水社)
上巻『傲慢(HUBRIS)』に続く下巻『天罰(NEMESIS)』を読了した。ラインラント進駐によって己の無謬性を確信する「傲慢(HUBRIS)」状態になったヒトラーが、オーストリア、チェコ、ポーランドへの侵攻、パリ占拠、独ソ戦を経て最終的には「天罰(NEMESIS)」と言うべき戦火のベルリン首相官邸地下壕で自決するまでの9年間の歴史である。2段組870ページの本文(別に注釈など270ページ)によって波乱万丈の第2次大戦の世界に没入していると頭がボーッとしてくる。
下巻はヒトラーの伝記というよりは、ナチス体制における意思決定の分析をまじえた戦史である。ソ連崩壊の頃から全貌が明らかになったゲッベルス日記による記述が多く、ゲッベルスの視点でヒトラーや党組織を眺めている気分にもなる。各部署がヒトラーの決定権だけに依存した「カリスマ支配」の非効率に分断された組織は、規模の違いはあっても現代の経営組織にも当てはまりそうに思える。ナチス幹部の人間関係の軋轢も興味深い。
本書は、国防軍内にかなり以前からあった反ヒトラーの動きを詳しく記述している。第2次大戦勃発以前の1938年のミュンヘン会談の頃のクーデター計画、1939年の建具屋エルザーによる時限爆弾、大戦末期の1944年7月20日のシュタウフェンベルク大佐による爆殺未遂などいろいろあるが、いずれも失敗に帰する。歴史のタラレバは無意味ではあるが、第2次大戦勃発以前にヒトラーが暗殺されていれば、歴史教科書に偉人の一人として載ったかもしれない。1944年の暗殺が成功していても歴史の大勢は変わらなかったように思える。
それにしても、自身が示したヴィジョンが達成できないなら国や国民は滅びてしまう方がいいと考えていたヒトラーは常軌を逸した人物である。そんなヘンな人は世の中には何割かいて、中には芸術家として大成する人もいるかもしれない。だが、そんな人が政治権力を掌握したら大きな悲劇になる。
上巻『傲慢(HUBRIS)』に続く下巻『天罰(NEMESIS)』を読了した。ラインラント進駐によって己の無謬性を確信する「傲慢(HUBRIS)」状態になったヒトラーが、オーストリア、チェコ、ポーランドへの侵攻、パリ占拠、独ソ戦を経て最終的には「天罰(NEMESIS)」と言うべき戦火のベルリン首相官邸地下壕で自決するまでの9年間の歴史である。2段組870ページの本文(別に注釈など270ページ)によって波乱万丈の第2次大戦の世界に没入していると頭がボーッとしてくる。
下巻はヒトラーの伝記というよりは、ナチス体制における意思決定の分析をまじえた戦史である。ソ連崩壊の頃から全貌が明らかになったゲッベルス日記による記述が多く、ゲッベルスの視点でヒトラーや党組織を眺めている気分にもなる。各部署がヒトラーの決定権だけに依存した「カリスマ支配」の非効率に分断された組織は、規模の違いはあっても現代の経営組織にも当てはまりそうに思える。ナチス幹部の人間関係の軋轢も興味深い。
本書は、国防軍内にかなり以前からあった反ヒトラーの動きを詳しく記述している。第2次大戦勃発以前の1938年のミュンヘン会談の頃のクーデター計画、1939年の建具屋エルザーによる時限爆弾、大戦末期の1944年7月20日のシュタウフェンベルク大佐による爆殺未遂などいろいろあるが、いずれも失敗に帰する。歴史のタラレバは無意味ではあるが、第2次大戦勃発以前にヒトラーが暗殺されていれば、歴史教科書に偉人の一人として載ったかもしれない。1944年の暗殺が成功していても歴史の大勢は変わらなかったように思える。
それにしても、自身が示したヴィジョンが達成できないなら国や国民は滅びてしまう方がいいと考えていたヒトラーは常軌を逸した人物である。そんなヘンな人は世の中には何割かいて、中には芸術家として大成する人もいるかもしれない。だが、そんな人が政治権力を掌握したら大きな悲劇になる。
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://dark.asablo.jp/blog/2018/08/25/8949719/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。
※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。