『知っておきたい「酒」の世界史』は酒の肴のような本2025年03月26日

『知っておきたい「酒」の世界史』(宮崎正勝/角川ソフィア文庫)
 『ワインの世界史』という文庫本を読んだのを機に、似たタイトルの次の文庫本を読んだ。

 『知っておきたい「酒」の世界史』(宮崎正勝/角川ソフィア文庫)

 読みやすい歴史蘊蓄エッセイである。次々にいろいろな酒が出てくるので、読んでいるだけで酔っぱらいそうになる――というか、酒が恋しくなってくる。ホロ酔い気分で読むのがいい本かもしれない。

 本書を読んでいると、人類は太古から酒に魅了され、その歴史の中で実にさまざまな素材から酒を造ってきたのだとわかる。糖を発酵させて醸造酒を造り、醸造酒を蒸留して蒸留酒を造り、さらには蒸留酒にハーブやスパイスを混ぜて混成酒を造る。で、世界は多種多様な酒に満ちている。食べ物が多様なのと同じことだとは思うが、たいした執念だとも思う。

 本書の冒頭近くに、遊牧民の馬乳酒や牛乳酒が出てくる。馬乳酒は保存もできる自家製の食料だったらしい。先日読んだ『酒を主食とする人々』を連想した。酒を食料にする文化は確かに存在し、それなりの合理性もあるようだ。

 飲料水の代替としての酒の話も多く登場する。腐敗を避けるには水より酒の方が適していたらしい。酒を飲んでも水分補給にはならないと聞いてきたが、必ずしもそうとは言い切れないようだ。どんな酒なら水分補給になるのかはよくわからない。

 本書は、私の知らなかった豆知識にあふれている。二つだけ紹介する。

 バーボンは米国の「建国の父」ワシントンが初代大統領になった年に生まれた酒である。それはフランスのブルボン朝を讃える酒だった。皮肉にもその年、ブルボン朝はフランス革命で倒れる。バーボンがブルボンだとは知らなかった。

 1919年から14年間、米国は禁酒法の時代だった。この時代にマフィアが大儲けしたのは知っていた。ニューヨークの酒場は禁酒法前には15000軒だったが、禁酒法時代には35000軒の「もぐり酒場」が生まれたそうだ。禁酒法が飲酒を増進させたとも言える。確かに愚かな法律である。

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