『滝沢家の内乱』を観て八犬伝を読まねばと感じたが…2025年07月02日

 かめありリリオホールで加藤健一事務所公演『滝沢家の内乱』(作:吉永仁郎、演出:加藤健一、出演:加藤健一、加藤忍)を観た。

 滝沢馬琴(加藤健一)と馬琴の息子の嫁・お路(加藤忍)の話である。舞台は最初から最後まで馬琴の屋敷の一部(馬琴の仕事部屋など)で変わらない。経過する時間はお路が嫁いできた直後から馬琴が亡くなるまでの二十数年と長い。

 この芝居の登場人物は二人だけである。馬琴の屋敷には馬琴の妻や息子、女中なども住んでいる。だが舞台には登場しない。妻と息子は別室から声だけが聞こえる。声の出演は高畑淳子(妻)と風間杜夫(息子)だ。シンプルな二人芝居という趣向がいい。馬琴をめぐる世間や家族との葛藤がくっきり浮かび上がってくる。

 お路が嫁いできたとき、馬琴はすでに有名な戯作者で、八犬伝の出版も始まっている。馬琴は八犬伝の執筆に28年を費やし、書き上げた6年後に82歳で亡くなる。執筆途中で馬琴は失明し、終盤はお路が口述筆記する。当初、仮名しか書けなかったお路は漢字を学び、口述筆記という大役を全うする。私は、この感動的な話を以前に小説で読んだことがある。あらためて舞台で見て、偏屈な馬琴と天真爛漫なお路との取り合わせの妙を感じた。お路が魅力的である。

 この芝居の初演は2011年で今回は4演目だそうだ。私は3年前、同じ作家による加藤健一の芝居『夏の盛りの蝉のように』を観た。葛飾北斎が主人公の『夏の盛りの…』には北斎が馬琴の悪口を言うシーンがあった。『滝沢家の内乱』に北斎への言及はない。だが、渡辺崋山は両方の芝居で重要な役割を担っている。二つの芝居が表裏の関係にあるように感じられる。

 私が馬琴と息子の嫁の話を知った小説は、かなり以前(30年ぐらい昔)に読んだ山田風太郎の『八犬伝』である。八犬伝の物語「虚の世界」と、八犬伝を執筆する馬琴を描いた「実の世界」を交互に積み重ねて展開する面白い小説だった。この小説は昨年映画化されているが観ていない。

 私が八犬伝に魅せられたのは大昔(60年以上前)の小学生の時だ。ジュニア版の八犬伝を読んで、なんと面白い物語だろうと感動した。いつの日か原作『南総里見八犬伝』を読みたいと思った。だが、いまだに果たしていない。『椿説弓張月』を読んだのは13年前で、次は『南総里見八犬伝』の原文に挑戦しようと思ったのだが、いたずらに年月が流れた。

 今回『滝沢家の内乱』を観て、『南総里見八犬伝』が未読なのを思い出した。実は、新潮日本古典集成別巻『南総里見八犬伝』(全12巻)は何年か前に入手している。気がかりな本なのだ。あの長い物語に取り組む日が来るかどうかはわからない。

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