58年ぶりに民藝公演『オットーと呼ばれる日本人』を観た ― 2024年05月26日
紀伊国屋サザンシアターで劇団民藝公演『オットーと呼ばれる日本人』(作:木下順二、演出:丹野郁弓、出演:神敏将、千葉茂則、他)を観た。劇団民藝の芝居を観るのは数十年ぶりだ。この芝居を観ようと思ったのは、懐かしかったからである。私が生まれて初めて観た新劇が『オットーと呼ばれる日本人』なのだ。半世紀以上昔の高校生の頃だった。
私が高校生だった1960年代、宇野重吉や滝沢修が率いる劇団民藝は新劇界をリードする輝かしい存在に見えた。同じクラスの親友が演劇部員で役者志望だったので、彼の影響から新劇という世界を知り、新劇なるものを一度は観たいと憧れた。
そして、初めて入手した新劇のチケットが劇団民藝の『白い夜の宴』(作:木下順二、演出:宇野重吉)だった。ところが、直前になって演目が『オットーと呼ばれる日本人』に変更になった。木下順二が新作を書き上げることができず、旧作の上演になったのだと思う。このときのチケットを保存しているので、1966年8月28日に都市センターホールで観劇したとわかる。高校三年の夏休みだった。
新劇初体験の印象は残っている。主演の滝沢修の抑えたような台詞回しに、これが新劇かと感じ入った。言い方はヘンだが、有難いものを拝見したという気分だった。その後、私も友人も反新劇へ関心が移っていくのだが……。
『オットーと呼ばれる日本人』とは尾崎秀実のことで、この芝居はゾルゲ事件を扱っている。58年ぶりに観る『オットーと呼ばれる日本人』の展開はほとんど失念していたが、記憶に残っている台詞が少しあった。やはり、新劇初体験の17歳のときに刻み込まれた記憶は消えにくいようだ。
この芝居、上演時間は3時間40分(2回の10分休憩を含む)と、かなり長いが、退屈することなく観劇できた。丁寧に造った舞台で役者たちは達者に演じる。面白い芝居だとは思うものの、内容や演技にどこか古臭さ(懐かしさでもある)を感じないわけにはいかない。私の偏見かもしれないが……。
ゾルゲ事件に関しては、この芝居を観た後に書籍や映画で新たな情報が上書きされている。そのせいだろうが、芝居の半ば過ぎ当たりでオットーは検挙され、その後は獄中の話になるような気がしていた。だが、いつまで経ってもオットーは検挙されない。
終幕前の場面転換でエピローグの獄中シーンになる。長尺の芝居のなかでエピローグは約10分に過ぎない。58年前に観たエピローグの印象が強く、芝居のかなりの部分を獄中シーンが占めていたように記憶が捏造されていたのだ。
私が高校生だった1960年代、宇野重吉や滝沢修が率いる劇団民藝は新劇界をリードする輝かしい存在に見えた。同じクラスの親友が演劇部員で役者志望だったので、彼の影響から新劇という世界を知り、新劇なるものを一度は観たいと憧れた。
そして、初めて入手した新劇のチケットが劇団民藝の『白い夜の宴』(作:木下順二、演出:宇野重吉)だった。ところが、直前になって演目が『オットーと呼ばれる日本人』に変更になった。木下順二が新作を書き上げることができず、旧作の上演になったのだと思う。このときのチケットを保存しているので、1966年8月28日に都市センターホールで観劇したとわかる。高校三年の夏休みだった。
新劇初体験の印象は残っている。主演の滝沢修の抑えたような台詞回しに、これが新劇かと感じ入った。言い方はヘンだが、有難いものを拝見したという気分だった。その後、私も友人も反新劇へ関心が移っていくのだが……。
『オットーと呼ばれる日本人』とは尾崎秀実のことで、この芝居はゾルゲ事件を扱っている。58年ぶりに観る『オットーと呼ばれる日本人』の展開はほとんど失念していたが、記憶に残っている台詞が少しあった。やはり、新劇初体験の17歳のときに刻み込まれた記憶は消えにくいようだ。
この芝居、上演時間は3時間40分(2回の10分休憩を含む)と、かなり長いが、退屈することなく観劇できた。丁寧に造った舞台で役者たちは達者に演じる。面白い芝居だとは思うものの、内容や演技にどこか古臭さ(懐かしさでもある)を感じないわけにはいかない。私の偏見かもしれないが……。
ゾルゲ事件に関しては、この芝居を観た後に書籍や映画で新たな情報が上書きされている。そのせいだろうが、芝居の半ば過ぎ当たりでオットーは検挙され、その後は獄中の話になるような気がしていた。だが、いつまで経ってもオットーは検挙されない。
終幕前の場面転換でエピローグの獄中シーンになる。長尺の芝居のなかでエピローグは約10分に過ぎない。58年前に観たエピローグの印象が強く、芝居のかなりの部分を獄中シーンが占めていたように記憶が捏造されていたのだ。
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