古典メタフィクションを舞台化した『最後のドン・キホーテ』 ― 2025年09月29日
神奈川芸術劇場でケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の新作『最後のドン・キホーテ』(作・演出:KERA、出演:大倉孝二、咲姫みゆ、山西惇、音尾琢真、犬山イヌコ、緒川たまき、高橋恵子、他)を観た。
ドン・キホーテをベースにした3時間45分(休憩15分を含む)の不条理ナンセンス劇である。舞台上を練り歩く生演奏やプロジェクションマッピングなどで華麗で壮大な劇空間を構築している。
私が岩波文庫全6冊の『ドン・キホーテ』(セルバンテス)を読んだのは2年前だからさほど昔ではない。物語の枠組みが崩れていくメタ構造にしびれた。とても面白い古典エンタメだった。
この芝居の主人公(大倉孝二)はクリンクルという名の老いた俳優である。舞台でドン・キホーテを演じているうちに、自分が本当にドン・キホーテだと思い込んでしまい、劇場から抜け出して諸悪を退治する遍歴へと旅立つ。その狂気のドン・キホーテに付き従うサンチョ・パンサは実は牧師だが、ある思惑からドン・キホーテの妄想に話を合わせている。
ドン・キホーテが遍歴する世界は戦時下の独裁国家で、その貧民街には救護所がある。そこの医師はドン・キホーテをレントゲン診察し、彼が体内で宝石を生み出す特異体質の人物だ知り、牧師と結託してその宝石をわが物にしようとしている。かなりヘンな設定である。
ドン・キホーテが逃げ出した劇場がある世界は戦時下ではない。老優に逃げられた劇団は代役探しに苦闘している。二つの世界は地続きのように見えて時空がズレている。戦時下でない世界に住む老優クリンクルの妻や娘たちも、彼の特異体質を知っていて彼を捜索している。彼自身が家族の遺産になると考えているのだ。
宝石を生み出すという特異体質は、狂気こそが価値あるものを生み出すというメタファかなと思いながら観劇していたが、その方向には展開しなかった。
時空がズレた二つの世界に加えてドン・キホーテが見ている夢の中の世界までが混ざり合って不条理ナンセンス劇が繰り広げられる――と言っても、セルバンテスの世界から大きくかけ離れているとは思えない。私はこの芝居を観ながら、ドン・キホーテの原作をそのまま舞台にしているような印象を受けた。テイストが同じなのだ。
原作同様、この芝居でもドン・キホーテは最後には正気に戻り、死を迎える。と言っても、芝居ならではの仕掛けがいくつかほどこされている。彼を迎えに来た死神(おそらく下っ端の死神)が、出版された『ドン・キホーテ』の読者なのが面白い。
ドン・キホーテをベースにした3時間45分(休憩15分を含む)の不条理ナンセンス劇である。舞台上を練り歩く生演奏やプロジェクションマッピングなどで華麗で壮大な劇空間を構築している。
私が岩波文庫全6冊の『ドン・キホーテ』(セルバンテス)を読んだのは2年前だからさほど昔ではない。物語の枠組みが崩れていくメタ構造にしびれた。とても面白い古典エンタメだった。
この芝居の主人公(大倉孝二)はクリンクルという名の老いた俳優である。舞台でドン・キホーテを演じているうちに、自分が本当にドン・キホーテだと思い込んでしまい、劇場から抜け出して諸悪を退治する遍歴へと旅立つ。その狂気のドン・キホーテに付き従うサンチョ・パンサは実は牧師だが、ある思惑からドン・キホーテの妄想に話を合わせている。
ドン・キホーテが遍歴する世界は戦時下の独裁国家で、その貧民街には救護所がある。そこの医師はドン・キホーテをレントゲン診察し、彼が体内で宝石を生み出す特異体質の人物だ知り、牧師と結託してその宝石をわが物にしようとしている。かなりヘンな設定である。
ドン・キホーテが逃げ出した劇場がある世界は戦時下ではない。老優に逃げられた劇団は代役探しに苦闘している。二つの世界は地続きのように見えて時空がズレている。戦時下でない世界に住む老優クリンクルの妻や娘たちも、彼の特異体質を知っていて彼を捜索している。彼自身が家族の遺産になると考えているのだ。
宝石を生み出すという特異体質は、狂気こそが価値あるものを生み出すというメタファかなと思いながら観劇していたが、その方向には展開しなかった。
時空がズレた二つの世界に加えてドン・キホーテが見ている夢の中の世界までが混ざり合って不条理ナンセンス劇が繰り広げられる――と言っても、セルバンテスの世界から大きくかけ離れているとは思えない。私はこの芝居を観ながら、ドン・キホーテの原作をそのまま舞台にしているような印象を受けた。テイストが同じなのだ。
原作同様、この芝居でもドン・キホーテは最後には正気に戻り、死を迎える。と言っても、芝居ならではの仕掛けがいくつかほどこされている。彼を迎えに来た死神(おそらく下っ端の死神)が、出版された『ドン・キホーテ』の読者なのが面白い。
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