シンポジウム「前田耕作先生の業績を語る会」に行った ― 2023年02月23日
本日(2023年2月23日)、東京国立博物館平成館大講堂で開催された「シンポジウム:前田耕作先生の業績を語る会」に行った。2022年12月に89歳で亡くなったアジア文化史研究者・前田耕作先生を偲んで、多くの関係者たちが先生の業績を語り合うシンポジウムである。
私が前田先生に初めて接したのは9年前、カルチャーセンターで「ギボン『ローマ帝国衰亡史』を読む」という講義を受講したときである。この講義は全10巻(ちくま学芸文庫)の8巻目に入った昨年春、先生の入院で中断した。その他にも「プルタルコス」「ローマの宗教」「ローマ皇帝群像」「ルネッサンスの異教秘儀」「弥勒」などいろいろな講義を受講した。2018年には先生が同行するシチリアの古跡を巡るツアーにも参加した。
先生の講義を受講して、すぐに感じたのは「学者の凄さ」だった。どんなことに関しても造詣が深く、この先生は何でも知っているのではなかろうかと感じた。私は学問の世界に縁のない人間で、人文系の学者と接する機会がなかったので、学問の世界の底深さに驚いたのである。
前田先生はローマ史の専門家ではない。若いときにアフガニスタンの学術調査に携わり、バーミアン遺跡などの文化財保護活動に尽力したことで知られている。本日のシンポジウムでもバーミアン絡みの話題が多かった。
そんな話のなかで、先生より12歳下の後輩学者が「<夢想・歴史・神話/宗教>を結ぶ“前田学”の原点」と題した、先生の学問の基盤の紹介が興味深かった。現象学、言語学、図像学など私には馴染みのない難しそうな世界の話だったので、十分に理解できたわけではないが…。
先生の専門が何であったか、私にはよくわからない。新聞などの表記は「アジア文化史」が多いが「ユーラシア思想史」や「東洋美術史」などもある。以前、酒席で先生にお尋ねすると「インド以外のアジア文化史」と返ってきた。アジアと言っても先生の著書『アジアの原像』はヘロドトスの話だからヨーロッパにも食い込んでいる。私が受講した講義の大半は古代ローマ史関連である。
先生から「一人の研究者が読める史料には限界があるので、おのずと歴史研究者の専門範囲は限られる」と聞いたこともある。だが、先生は専門を狭く限定するのでなく、文化の交流という広がりのある歴史を探究していた。「文明の十字路、混成文化の発信地」と言われるアフガニスタンの学術調査からスタートしたことが、視野の広い学風につながったのだと思う。「日本の学界からは距離を置いていた。行動する学者だった」というシンポジウムでの指摘が印象深い。
私が前田先生に初めて接したのは9年前、カルチャーセンターで「ギボン『ローマ帝国衰亡史』を読む」という講義を受講したときである。この講義は全10巻(ちくま学芸文庫)の8巻目に入った昨年春、先生の入院で中断した。その他にも「プルタルコス」「ローマの宗教」「ローマ皇帝群像」「ルネッサンスの異教秘儀」「弥勒」などいろいろな講義を受講した。2018年には先生が同行するシチリアの古跡を巡るツアーにも参加した。
先生の講義を受講して、すぐに感じたのは「学者の凄さ」だった。どんなことに関しても造詣が深く、この先生は何でも知っているのではなかろうかと感じた。私は学問の世界に縁のない人間で、人文系の学者と接する機会がなかったので、学問の世界の底深さに驚いたのである。
前田先生はローマ史の専門家ではない。若いときにアフガニスタンの学術調査に携わり、バーミアン遺跡などの文化財保護活動に尽力したことで知られている。本日のシンポジウムでもバーミアン絡みの話題が多かった。
そんな話のなかで、先生より12歳下の後輩学者が「<夢想・歴史・神話/宗教>を結ぶ“前田学”の原点」と題した、先生の学問の基盤の紹介が興味深かった。現象学、言語学、図像学など私には馴染みのない難しそうな世界の話だったので、十分に理解できたわけではないが…。
先生の専門が何であったか、私にはよくわからない。新聞などの表記は「アジア文化史」が多いが「ユーラシア思想史」や「東洋美術史」などもある。以前、酒席で先生にお尋ねすると「インド以外のアジア文化史」と返ってきた。アジアと言っても先生の著書『アジアの原像』はヘロドトスの話だからヨーロッパにも食い込んでいる。私が受講した講義の大半は古代ローマ史関連である。
先生から「一人の研究者が読める史料には限界があるので、おのずと歴史研究者の専門範囲は限られる」と聞いたこともある。だが、先生は専門を狭く限定するのでなく、文化の交流という広がりのある歴史を探究していた。「文明の十字路、混成文化の発信地」と言われるアフガニスタンの学術調査からスタートしたことが、視野の広い学風につながったのだと思う。「日本の学界からは距離を置いていた。行動する学者だった」というシンポジウムでの指摘が印象深い。
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