酒ぬきでも『加藤登紀子ほろ酔い50年祭』で酔った気分に…2022年12月26日

 有楽町マリオンのヒューリックホール東京で開催された『加藤登紀子ほろ酔い50年祭』に行った。加藤登紀子のライブは初体験である。

 観客に酒をふるまう「ほろ酔いコンサート」を加藤登紀子が定期的に開催しているという話は昔から聞いていた。彼女の曲は好きだが、コンサートに行こうと思ったことはなかった。だが、広告で「50年祭」という文字を見て、あらためて50年という歳月の長さをしみじみ考えた。私が彼女のLPを初めて買ったのは50年以上前の二十前後の頃だ。私より5歳上の加藤登紀子は今年79歳、いまのうちにライブを見ておかねば……という気になった。

 ヒューリックホール東京は昔の日劇だ。大劇場である。そんな大きな会場で「ふるまい酒」はなかろうと思って出かけた。客席シートのドリンクボックスにワンカップ大関が用意されていた。飲みながらコンサートを聞いてもいいのかなと思った。だが場内アナウンスが「おみやげとして、お持ち帰りください」とくり返していた。

 満席の観客は、予感した通り私と同様の高齢者が大半だった。かなり盛り上がっていた。客席のワンカップはおみやげだが、ステージ上の加藤登紀子はワンカップをグイグイと飲んでいた。歌声がかすれたりもするが、そんなことはものともせず何曲も歌いあげる。しゃがれ声にも味があると思えてくる。

 「時代遅れの酒場」や「時には昔の話を…」を聞いていると、酒を飲んでいなくても追憶の感傷にひたって酔った気分になってくる。アンコールでは「Never Give Up Tomorrow」「 Power to the People」を高らかに歌いあげた。前方の観客の多くはスタンディングで合唱、かすかに往年の新宿西口地下広場の光景に重なった。

 トークで満洲という地名が出てきて、ハッとした。そう言えば加藤登紀子は満洲のハルピン生まれだった。満洲を舞台にした小説『地図と拳』を読了したばかりだったので、相乗効果で歴史の彼方の満州が身近に浮かび上がってきた気分になった。