書評に惹かれて『絶対悲観主義』を読んだ2022年12月16日

『絶対悲観主義』(楠木建/講談社+α新書)
 朝日新聞・読書欄(2022.12.3)の「売れている本」で次の本を紹介していた。

 『絶対悲観主義』(楠木建/講談社+α新書)

 紹介文に「ふむ、これは古代ローマで流行ったストア哲学の亜種だ」「…本当に声を出して笑ってしまった。傑作エッセイである」などとあり、読みたくなった。

 著者は高名な経営学者で、専攻は競争戦略だそうだ。本書には、著者と交流のある経営学者や高名な経営者が何人も登場する。『競争の戦略』で有名なマイケル・ポーターも出てくる。著者の身辺雑記自伝的な要素もあるエッセイだ。消極的な理由で学者の道に進み、それなりに成功していく物語を自虐オブラートに包んで語っている。その自分語りの部分が面白く、最も印象に残った。

 基本的には「仕事」への向き合いを説いた書である。その主旨は「第1章 絶対悲観主義」で明瞭簡潔に尽くされている。著者によれば、仕事とは自分以外の誰かのためにすることであり、それ故に、絶対に自分の思い通りにはいかないものである。だから「うまくいくことなんてひとつもない」という前提で取り組むべきだ。この心構えが絶対悲観主義である。

 冒頭の数頁で主旨を簡潔に述べた後、本書は著者の自分語りをベースにした処世訓の趣になる。これが脱力系の笑えるエッセイで、面白くてタメになる。と言っても、仕事への心構えの話は、とっくに仕事からリタイアした気ままな高齢者の私には、もはや手遅れである。

 最終章のタイトルは「初老の老後」(著者は58歳)だ。ここで、高齢者の人生に多少は関わってくる。著者の結論は「なるようにしかならないが、なるようにはなる」である。同感できる。

 プラス思考・マイナス思考という言葉があるが、絶対悲観主義はマイナス思考のススメではない。本書は逆説的な自己啓発本であり、経営書でもある。著者は競争戦略の専門家だ。絶対悲観主義とは最も有効な競争戦略なのかもしれない。