『銀河ヒッチハイク・ガイド』はバカバカしくも壮大なコメディSF2022年04月05日

『銀河ヒッチハイク・ガイド』(ダグラス・アダムス/安原和見訳/河出文庫)
 タイトルのみを知っていて内容はまったく知らない、未読の気がかりな小説は山ほどある。そんな小説のひとつを、ついに読んだ。

 『銀河ヒッチハイク・ガイド』(ダグラス・アダムス/安原和見訳/河出文庫)

 きっかけは先日読んだ小説『異常』(エルヴェル・テリエ)である。このエンタメ小説はかなり衒学的で、『ゴンチャロフ』『プラトン』『ゴドーを待ちながら』『風とともに去りぬ』『スタートレック』などなどに脈略なく言及し、主要登場人物の一人は『銀河ヒッチハイク・ガイド』を愛読している。このくだりで、未読だった『銀河ヒッチハイク・ガイド』が心に引っ掛かり、読むことにした。

 読み始めれば一気に読んでしまうコメディSFである。冒頭50ページぐらいで、いきなり地球が滅亡する。その理由が実にバカバカしい。

 主人公は生き残った平凡な一人の地球人で、友人(地球人のふりをしていた宇宙人で、『銀河ヒッチハイク・ガイド』という本の調査員)とのヘンテコな遍歴が始まる。宇宙規模の深遠そうにも見えるギャグが面白い。私はこういうバカバカしくて壮大なSFは好きである。だが、年のせいか、このテの小説は少々食傷気味でもある。

 原書がイギリスで出版されたのは1979年、その後シリーズ化されて何冊か出たが、作者は2001年に49歳で急死したそうだ。2005年に出た河出文庫版の本書は新訳で、それ以前に新潮文庫でも翻訳が出ていたそうだ。もっと早い(若い)時期に読んでいれば、もっと楽しめたと思う。