『異常』という小説は確かに異常を描いている2022年03月26日

『異常:アノマリー』(エルヴェル・テリエ/加藤かおり訳/早川書房)
 少し変わった面白い小説を読んだ。思考実験的なSFである。

 『異常:アノマリー』(エルヴェル・テリエ/加藤かおり訳/早川書房)

 版元である早川書房のホームページでは、次のように紹介している。

 「ゴンクール賞受賞、異例の110万部突破! NYに向けて降下する航空機を襲った異変。世界中に不安が広がるなか、搭乗者たちの決断は――殺し屋、ポップスター、売れない作家、軍人の妻、がんを告知された男……なんのつながりもない人びとが、ある飛行機に同乗したことで、運命を共にする。飛行機は未曾有の巨大乱気流に遭遇し、乗客は奇跡的に生還したかに見えたが――。」

 この惹句通りの小説で、読み始めて数十頁まではつかみ所がなかったが、しばらく読み進めて状況把握ができると俄然面白くなった。一体どうなるだろうと盛り上がり、一気に読了した。ネタバレになりそうなので、上記紹介以上の内容への言及はひかえる。

 小説が提示した状況を把握したとき、いったん本を閉じて、この先の展開についていろいろ予測してみた。想像力が枯渇していて、自分で面白いと思える展開は思いつかず、ロクな予測はできなかった。実際の展開は私の予測とは全然違っていた。

 ややペダンティックなエンタメ小説で、文学者・哲学者・アーティストの名がいろいろ出てくる。著者が披歴する世界を十全に把握できたわけではないが、伝統的な文学と新しい小説の混ざり具合がいいと感じた。

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