大竹しのぶ主演『リア王』のコーディリアは軍服姿2025年10月20日

 シアターミラノ座でシェイクスピアの『リア王』(上演台本・演出:フィリップ・ブリーン、翻訳:木内宏昌、出演:大竹しのぶ、宮沢りえ、安藤玉恵、生田絵梨花、横田栄司、山崎一、他)を観た。

 リア王を大竹しのぶが演じると聞いて少し驚いたが、近年は性差にこだわらない配役が多い気がする。長女ゴネリルは宮沢りえ、次女リーガンは安藤玉恵、三女コーディリアは生田絵梨花である。

 昨年、段田安則の『リア王』(演出:ショーン・ホームズ)を観ているので、内容はほぼ頭に残っているはずだが、今回の舞台を観ながら「こんなに面白い芝居だったのか」との思いを新たにした。やはりシェイクスピアはスゴい。今さらながらだが…。

 フィリップ・ブリーン演出の舞台を観るのは『欲望という名の電車』『アンナ・カレーニナ』に続いて三作目だと思う。前者は大竹しのぶ、後者は宮沢りえが主演だった。今回はその二人が出演している。大竹しのぶが演じるリア王は女王の設定ではない。台詞は原作通りだが、老いた男性に扮するわけではなく、役者の存在感でリア王を演じきっていた。毅然たる悪女を演じる宮沢りえが適役なのが、少々以外だった。

 昨年観た『リア王』は、台詞は原作のまま現代の服装で演じ、リア王は同族企業の頑迷な老経営者のイメージだった。今回の芝居も衣装は現代風だが、舞台装置は超時代的である。前半の宮殿内の背景は18世紀のナポレオン戦争を思わせる大壁画だ。リア王の娘たちはドレス姿、家臣たちは背広や軍服である。おもむろに登場するリア王の背広の胸には夥しい勲章があり、時代遅れの独裁者の趣がある。

 衣装や装置は超時代的で、台詞は原作通りだが、さほど違和感はない。長女ゴネリルの臣下オズワルドが女性なのが新鮮だ。

 終盤、フランス軍がコーディリアと共にドーヴァーに上陸してくる場面には迫力がある。舞台上に近代の戦場を思わせる殺伐たる光景が拡がる。英仏の兵士たちは迷彩服である。上腕にユニオンジャックか三色旗かの違いがあるだけだ。コーディリアが迷彩服の軍服姿で登場したのには驚いた。女性兵士である。観劇後、あらためてシェイクスピアの戯曲を確認し、コーディリアが軍服なのは自然だと思った。新たな発見である。

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