芝居『キネマの天地』を観た後で映画版を観たが…2021年06月14日

 映画『キネマの天地』を観ないままに 芝居『キネマの天地』(脚本:井上ひさし) を観劇し、違う話とは言えやはり映画も観ておこうという気になり、 Amazon prime video でこの映画を観た。

 1986年公開の山田洋次監督の映画で、脚本は井上ひさし、山田太一、山田洋次、朝間義隆となっている。

 有森也実、中井貴一、渥美清はじめ多くの有名俳優が出ている。35年前の映画なので俳優たちがみな若い。物故者も多いが懐かしい面々だ。1930年代の浅草と松竹蒲田撮影所を舞台にした物語で、戦前の情景にノスタルジーを感じる(私は戦後生まれだが)。

 映画館の売り子だった少女がスター女優になっていく人情味あふれたサクセスストーリーで、その続編の位置づけのミステリー仕立ての芝居とはかなり趣が異なる。

 それはともかく、途中で気づいたのだが、私はこの映画を既に観ていた。次の科白が頭に浮かんだり、所々の情景に既視感があり、以前に観ていると感じたのは映画の半分を過ぎたあたりだった。いつ、どこで観たかはまったくわからない。

 年を取るとこういう体験が増えていくだろう。そのうち、かすかな既視感のなかで映画を観終わり、それを以前に観たか否かの判断がつかなくなり、やがては既視感なく観終えることになるかもしれない。それは結構なことに思える。