『ゆかいな仏教』で自分が仏教を知らないと悟った2023年11月21日

『ゆかいな仏教』(橋爪大三郎・大澤真幸/サンガ新書/(株)サンガ)
 大澤真幸氏の『社会学史』を読了し、未読棚に積んでいた同じ著者の次の本が気になり、何とか読了した。

 『ゆかいな仏教』(橋爪大三郎・大澤真幸/サンガ新書/(株)サンガ)

 10年前の2013年11月に出た「サンガ新書」である。サンガとは仏教の出家集団を指す言葉だ(本書で知った)。仏教書の出版社の新書のようだ。

 社会学者・橋爪大三郎氏と大澤真幸氏の対談本で、橋爪氏はこの対談をジャズのジャムセッションのようだと述べている。両氏は本書の前に『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書)という対談本を出している。『ふしぎなキリスト教』がとても面白かったので仏教の本書も購入したものの、そのまま積んでいた。

 タイトルに「ゆかいな~」とあり、仏教の楽しげな解説を予感したが、かなり哲学的で難解な対談だった。『ふしぎなキリスト教』ほどわかりやすくない。仏教の入門編・初級編ではなく中級編か上級編である。自分が仏教について何も知らないと気づかされ、本書の前に入門書を読んでおくべきだったと思った。

 理解しやすくはないが、碩学二人の掛け合いが面白く、 「覚り」や「空」に関して頭の中に「??」を浮かべつつ読み進めた。何とか読了したと感じた由縁である。

 本書は初期仏教(紀元前5世紀頃)から大乗教(ブッダの死後500年の紀元前後に発祥)までを論じ、最後に密教に触れている。インドにおける仏教の展開の解説であり、中国や日本の仏教にはほとんど言及していない。日本の仏教の上澄みをチラリと見てきただけの私にとっては初めて接する世界である。仏教ってこんな宗教だったのかとの思いを新たにした。

 本書が『ふしぎなキリスト教』よりわかりにくいのは、仏教の方がキリスト教より複雑で難解だからだと思う(キリスト教もわかりやすくはないが)。キリスト教やイスラム教と仏教を比較・検討する箇所が多く、仏教が最も捉えにくいと感じた。それは、私の頭が西欧的思考に馴らされているせいかもしれない。反省。

 難解な対談のなかで二人が展開する「たとえ話」が面白い。覚りを開いた後の釈迦を「退職後のボランティア」、修行を積むことを「ポイントを貯める」などと説明している。大学、予備校、入学試験、模擬試験などのたとえが頻出するのも興味深い。一例をあげれば、仏になる以前の大菩薩を「ニルヴァーナ大学の入試に合格し、入学許可を得ているのに、わざと入学手続きをせず、予備校でアルバイトしたり、家庭教師をしたりして、後輩たちの受験勉強のめんどうをみている」と説明している。

 ゆかいな「たとえ話」の部分だけでもじっくり読み返せば、本書の理解が少しは深まりそうな気がする。

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