花園神社境内のテントで41年ぶりに『下谷万年町物語』を観た2022年06月21日

 新宿の花園神社境内で新宿梁山泊のテント公演『下谷万年町物語』(作:唐十郎、演出:金守珍、出演:蜂谷眞未、大鶴義丹、六平直政、他)を観た。猥雑華麗な面白い芝居だった。

 初演は1981年の西武劇場(現パルコ劇場)である。私は41年前のこの初演を観ている。観たという記憶があるが、悲しいことに内容はほとんど失念している。テントではなく立派な大劇場の舞台に立つ李礼仙に感慨をおぼえた記憶はある。表紙が李礼仙の公演パンフを購入したはずで、今回の観劇を機に探索したが見つからなかった。演出は蜷川幸雄だったかもしれない。はっきりしない。

 今回の観劇では、芝居を眺めているうちに昔の観劇記憶がどのくらい甦ってくるかが楽しみだった。残念ながら「ぎんやんま」という言葉に遠い記憶が反応しただけで、ほとんど初見に近い印象だ。

 下谷万年町に棲息するオカマたちの世界を幻視的に描いた舞台で、ノスタルジックな情景が多い。このテント芝居を眺めながら、半世紀近く昔、私が新入社員だった頃の遠い記憶が甦ってきた。

 若かった私は、酒席で話の合うある先輩に紅テントの状況劇場が面白いという話をした。先輩からは「あれは浅草六区だね」とのコメントが返ってきた。浅草六区が何であるかを知らなかった私は返す言葉がなく、ややしらけた。

 ……そんなことを思い出したのは、この芝居が下谷万年町のオカマたちと浅草との競合・共同を描いているからである。下谷万年町と浅草、そして水の底の幻想世界が交錯してオカマの世界を過激に猥雑かつ華やかに現出させる舞台に圧倒された。

 先日、同じ花園神社で上演された劇団唐組の『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』でも感じたことだが、往年の状況劇場を演じる現代の俳優たちの怪演に感服する。21世紀のテント芝居に往年の熱気を感じることができるのは不思議であり、感無量でもある。